NECは3月23日、ステークホルダーとの共創活動や情報発信、実効性の高い提言を行う「ソートリーダーシップ活動」の強化を発表した。同社は「NEC 2030VISION」で示す未来の社会像の実現と、そのために必要な技術の社会実装に向けた活動の拡充に向けて組織体制を拡充させる。
2022年4月1日付けで、経営企画部門にソートリーダーシップ部を新設し、インテリジェンス、コミュニケーション、サステナビリティといったパーパス経営の主要機能も経営企画部門に統合して、NECのビジネスユニット(BU)の連携を深めていく。R&Dとの連携では、グローバルな研究者ネットワークとアカデミアネットワークを通じて、文理融合研究の共創活動やNECが知見を有するAI、生体認証、量子などの先端技術の社会実装を進める。
同日開催の記者説明会には、ソートリーダーシップ活動の責任者となった取締役 執行役員 副社長の石黒憲彦氏が登壇した。
石黒氏は、「カーボンニュートラル、データ駆動型都市運営、Beyond 5G、デジタルガバメント、ヘルスケアなどの領域には多様なステークホルダーが存在し、NECだけで市場を形成できるものではない。各論での事業ビジョンを描き、ステークホルダーからの共感を獲得し、仲間づくりを経て、初めて未来の社会像を実現できるものと考える」とソートリーダーシップ活動の意義を語った。
NECは、「2025中期経営計画」において、「『未来の共感』を創る」を自社のパーパス(存在意義)に掲げるとともに、2030年に暮らす人々が求める社会の姿を「NEC 2030VISION」としてまとめている。同社はこれまで、「環境」「社会」「暮らし」の3領域における価値創造を目指して、Environment、City、Communication、Business、Lifeの5つのテーマで技術の社会実装に向けたソートリーダーシップ活動に取り組んできた。
例えば、大学との連携では、「NEC Beyond 5G 協働研究所」を設立し、「Beyond 5G価値共創社会連携講座」を開設した。和歌山県南紀白浜市では「IoT おもてなしサービス実証」を開始し、冊子や書籍、ホワイトペーパーでスマートシティ、顔認証、行政のデジタル化などの知見を発信している。新事業開発や共創型の研究開発(R&D)、AI倫理強化など複数パートナーとのイニシアティブにも参画している。
「共創型R&DのBIRD INITIATIBVEでは、2022年度に2プロジェクトのカーブアウトを予定している。その他、ある程度結果が出た活動についてはステークホルダーへの浸透を深めていく。また、当社内でもカーボンニュートラル、ヘルスケアはBUが多岐にわたるため、統一的なビジョンをまとめ直して、事業を進めていく」と石黒氏。
NECは、2023年度以降にビジョン、ソート(理念)のデザインを行い、共創プロジェクト、実証実験を経て、2025年度に向けて具体的な市場形成に繋がる投資活動・事業活動へと発展させるロードマップを描いている。
加えて、NECグループのシンクタンクである国際社会経済研究所(IISE)に、ソートリーダーシップ推進部を設置し、常任の新理事長にシンクタンク・ソフィアバンク 代表の藤沢久美氏が就任する。
藤沢氏は「日本、そして世界のさまざまな人とネットワークを作っていき、世界の課題を解決するシンクタンクを作っていきたい。振り返ってみるとNECや日本のためになっていた、そういった活動を目指して尽力したい」と意気込んだ。
IISEは2000年の設立以来、デジタル化の進展に伴うヘルスケアやプライバシーなどの領域で高度専門リサーチャーを有し、調査研究や外部講演、シンポジウム開催、メディア寄稿などを行ってきた。新設するソートリーダーシップ推進部から産官学連携を進め、業界団体、シンクタンクと共同で、より実効性の高い提言を行うという。
「政府、国際機関、アカデミア、NPO・NGOとの外部機関連携を深め、外部有識者ネットワークの結節点となって社会知を形成する、グローバルな知の集約の場としたい。得られた社会知を行政や企業のDXなど、NEC本体が行うソートリーダーシップ活動にフィードバックし、グループ全体の知的・人的・社会関係資本の拡充に貢献する。各種セミナー・カンファレンスのほか出版活動を通じて外部発信も強化する」(石黒氏)