日本マイクロソフトは3月23日、同社のサステナビリティに対する取り組みを説明し、脱炭素取組みを支援するクラウドプラットフォーム「Microsoft Cloud for Sustainability」を2022年上半期に提供開始予定だとアナウンスした。
米マイクロソフトでは、2030年までにカーボンネガティブを実現し、2050年までに創業以来の排出量に相当するCO2を取り除くと2020年に宣言し、10億ドルの気候変動対策基金を設立した。
日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人氏はこの目標について、「カーボンニュートラルに関しては、2012年から取り組んでいるが、2020年にかなり踏み込んだ目標を発表した。このコミットメントはマイクロソフト1社だけで達成できる目標ではなく、あらゆる企業・団体が目標達成するための支援をしていかなければならない。そこで、われわれが得た知見を基に製品を開発し、お客様やパートナーに提供していく。また、マイクロソフトの従業員の意識を高めることも重要で、これも同時にやっていく」と述べた。
なお、日本マイクロソフトにはサステナビリティの専門部署はなく、説明機会が多い藤井氏が代表して説明した。
マイクロソフトはカーボンのほか、水、廃棄物、生態系の4つのカテゴリでコミットメントを発表している。
上述したカーボンネガティブというのは、排出量とオフセットをつり合わせるだけでなく、年度ごとにカーボンを減らしていくことだという。
水に関しては2030年までに水をポジティブ(使う量よりもきれいな水を増やしていく)にすることを目標にし、データセンターの浪費を削減し、オフィスで利用する水を減らす、再生水の利用を促す、敷地内にきれいな水をつくる施設を整備していくことなどを行っていくという。
廃棄物に関しては、2030年までに廃棄物をゼロにすることを目標に、そのためにAzureデータセンターにサーキュラーセンターをつくり、廃棄するサーバや部品の再利用を行っていくという。
また、生態系については、2025年までにマイクロソフトがビルやデータセンターなどで使用している面積を上回る面積の土地を保護していくことを目標に、地球環境を守る活動をしている企業や団体を、AI for Earthというプログラムで支援し、Planetary Computerの構築や配備を行っていく。
AI for Earthは、助成金とテクノロジ支援の2つを行い、農業、水、生物多様性、気候変動の4つの領域で支援している。
Planetary Computerは、地球環境を維持改善のための必要なクラウドツールを開発するための基盤。この基盤では、さまざまな環境に関するデータが用意され、このデータを使っていくアプリの開発環境、アプリをホスティング環境を提供する。なお、現在はプレビュー版として提供され、すでに4000人ほどが利用しているという。 これらの活動により、2021年度には250万tのCO2除去に成功し、130万立方メートル以上の容積効果が期待できる水補充プロジェクトに投資。廃棄物では、循環センター(Circular Center)を5か所計画しているという。
同社の試算によると、Azureデータセンターを利用すれば、自社のオンプレミスで運用する場合に比べ、最大98%カーボンを削減できるという。
2020年に設立した気候変動対策基金(気候イノベーションファンドの設立)は、炭素固定脱炭素向けのプロジェクトを行う企業に、2020年から4年間で10億ドルを投資する計画だが、すでに5億ルに投資しているという。
同社では、これまでサステナリビリティに取り組んだことで得た知見やノウハウをサービスで提供するため、「Microsoft Cloud for Sustainability」を2022年上半期に提供開始する予定。(現在はプレビュー版)
このサービスでは、CO2排出量に関連するデータをAPI接続し影響を計算したり、データをAIで分析しインサイトを提示したり、自社の目標に対する達成度をトラックしていく機能を提供していくという。
そのほか、AzureやMicrosoft 365のユーザー向けに、これらを利用することで排出したCO2排出量を可視化できる「Microsoft Emissions Impact Dashboard」も提供しているという。