Samsungグループでパッケージング事業などを担当する韓Samsung Electro-Mechanics(サムスン電機)は、同社の釜山事業場に半導体パッケージング用FCBGA(Flip Chip-Ball Grid Array)基板製造ラインの増築および生産設備導入に3000億ウォン(約300億円)規模の投資を行う計画であることを3月21日に明らかにした。

  • サムスン電機の釜山事業所全景

    サムスン電機の釜山事業所全景 (出所:サムスン電機)

  • サムスン電機で増産するFCBGA基板

    サムスン電機で増産するFCBGA基板 (出所:サムスン電機)

FCBGAの生産に合計1600億円の投資

同社はベトナム生産法人に1兆3000億ウォン(約1300億円)規模の投資を行い、FCBGAパッケージ基板の生産工場を新設するとしているが、今回の追加投資でFCBGAパッケージ基板増設に投入される金額は1兆6000億ウォン(約1600億円)規模に増えることとなる。

同社では、今回の投資を通じて半導体の高性能化および市場成長に伴うパッケージ基板需要の増加に積極的に対応することで、市場シェア拡大ならびにハイエンド製品製造に向けた基盤構築を進める計画だとしている。

FCBGA基板は、高集積の半導体チップとメイン基板を接続して電気的信号と電力を伝達する半導体パッケージ基板で、高性能および高密度な回路の接続を要求するCPUやGPUに主に使用されている。高速な信号処理を必要とするアプリケーションの需要が増加していくことから、こうしたハイエンドパッケージ基板市場は、中長期的に年間20%増で成長していくと予想されており、中でもCPUの性能向上により大型基板を中心に需要が増えることから、供給能力が拡大するにも関わらず、2026年までにパッケージ基板の需給状況はタイトになると予想されていると同社では指摘している。

MCPで進む半導体の高性能化

サムスン電機のChang Duckhyun(チャン・ドクヒョン)社長は「半導体の高性能化やアプリケーションの拡大で半導体メーカーが技術力のあるパッケージ基板パートナーを確保することが重要になっている」とし、「我々は顧客に新たな経験を提供できる技術開発に集中して競争力を高める計画だ」としている。

また、同氏は16日開催の定期株主総会にて「パッケージ基板は新しいパラダイムを迎えている」とし「SoS(System on Substrate)はすべてのシステムを統合するプラットフォームになるだろう」と次世代パッケージ基板の方向性を示した。SoSは、2個以上の半導体チップをパッケージ基板(Substrate)に配置し、さまざまな機能を統合したシステムを搭載したマルチチップパッケージ(MCP)である。

なお、同社は1991年に基板事業を開始。Samsungグループのみならず、世界有数の企業に製品を供給しており、特にフラッグシップモバイルアプリケーションプロセッサ(AP)用半導体パッケージ基板はシェア、技術力ともにトップクラスであるとしている。また、同社の2021年の売上高は前年比24.8%増の9兆6750億ウォン(約9500億円)。高成長の背景には、ハイエンドAPや5Gアンテナ用BGA、ラップトップPC、車載用FC-BGAなどの需要が増加したためだという。

  • サムスン電機の年間売上高の推移

    サムスン電機の年間売上高の推移 (出所:サムスン電機の投資家向け資料)