ソフトバンクは3月23日、量子技術とAI(人工知能)を活用したSaaSを提供する米Sandbox AQと、耐量子計算機暗号（Post Quantum Cryptography：PQC）を使用したVPN(仮想私設網)などの実用化に向けて、日本での共同実証実験に関するパートナーシップ契約を結んだことを発表した。

この契約により、ソフトバンクは、アメリカ国立標準技術研究所（NIST）が推進する「耐量子計算機暗号標準化プロジェクト」のラウンド3の最終候補および代替候補に選定されたPQCアルゴリズムを使用した検証を行い、将来的な標準化を見据えたPQCをいち早く実用化することを目指す。

  • 耐量子計算機暗号システム構成イメージ

インターネットが必要不可欠となった昨今では、クレジットカード情報や個人情報などの機密情報をスマートフォンのアプリなどでやりとりをする機会が増えている。現在では、それらの通信内容を秘匿にするために、公開鍵暗号（RSA暗号や楕円曲線暗号）などを用いて安全性が保たれている。しかし、世界中で開発が進められている量子コンピュータによって、現在広く普及しているこれらの暗号が、今後、瞬時に解読され通信の中身が盗まれる可能性があると両社は指摘している。

この問題を解決するために、量子コンピュータでも解読が困難な新しい暗号であるPQCの実用化および導入が必要不可欠だ。PQCは、秘匿だけでなく認証（デジタル署名）にも適用可能で、ソフトウェアで実装できるため、インターネットとの親和性が高く、スマートフォンやタブレットなど、既存の通信デバイス上での利用が想定されている。

米国では、2030年ごろまでに暗号鍵長2,048ビットのRSA暗号を解読可能な量子コンピュータの登場を想定し、NISTにおいて「耐量子計算機暗号標準化プロジェクト」を推進しており、PQCとして採用する暗号アルゴリズムを2024年に決定するという。今回、Sandbox AQが提供するPQCは、同プロジェクトのラウンド3の最終候補および代替候補として選定されたさまざまなアルゴリズムを使用することができ、将来の標準化を見据えた検証を行うことが可能だという。

ソフトバンクは2022年夏までに、5G、4G、Wi-Fiなどのさまざまなネットワーク上でPQCアルゴリズムを動作させ、ネットワーク、マシン、ユーザーそれぞれの観点から性能を評価・検証する。また今後、顧客が量子コンピュータからの攻撃にも耐性を持つセキュリティを活用できるよう、商用ネットワークに早期にPQCを適用することも検討していく方針だ。