三菱重工業と米シエラスペース(Sierra Space Corporation)は3月22日、国際宇宙ステーション(ISS)退役後の地球低軌道利用への参画を視野に、米国の民間企業などによる開発・所有・運用を目指す商用宇宙ステーション「オービタル・リーフ(Orbital Reef)」の開発に関する覚書(MOU)を締結し、両社の知見を活かした幅広い技術分野での実現性検討を実施していくことを発表した。

ISSは、2024年から2030年まで運用が延長されたが、そのあと廃棄処分となり、大気圏再突入後、太平洋に安全に落下させる計画が検討されている。そこで、ISSがいなくなる高度約400kmの地球低軌道への投入が計画されているのが、オービタル・リーフである。

シエラスペースは、往還型の無人宇宙輸送機「Dream Chaser」の開発で知られ、商業宇宙分野におけるリーディングカンパニーの1社であり、Amazonの創設者であるジェフ・ベゾスが設立したブルーオリジンと共同で、ボーイングやレッドワイヤースペース、ジェネシスエンジニアリングなどの協力も得てオービタル・リーフの開発を進めている。

オービタルリーフは、宇宙の「多目的ビジネスパーク」として構想されており、研究、産業、国際および商業などにおいて、宇宙輸送とロジスティクス、宇宙居住、機器の収容、および運用を含む、コスト競争力のあるエンド・ツー・エンドのサービスを提供する計画だという。完成予定は、現時点では2035年とされている。

今回のMOU締結に関して三菱重工 宇宙事業部の西ヶ谷知栄事業部長は、「このたび、シエラスペースをはじめとする米国企業が開発を進めるオービタル・リーフに対し、当社がこれまで蓄積してきた技術ならびに経験を評価いただいたことを大変嬉しく思います。今後、どういった技術、製品、サービスで多様なお客様にどのような貢献が可能か、シエラスペースと具体的な協業を進めていきます。また、ISSの開発・運用に係る日本の実績を評価いただいていると理解しており、JAXAや他日本企業とも連携を取りながら、できることを幅広く考えシエラスペースと協業を図っていきたいと思います」とコメントしている。

またシエラスペースのトム・バイスCEOは、「シエラスペースは地球上のより豊かな暮らしの実現に向け、宇宙でのプラットフォーム建設を進めています。今回、三菱重工と長期的な協力関係を築けたことは大変光栄であり、三菱重工の豊富な技術的知見を生かし、オービタル・リーフと次世代の宇宙輸送の確立に継続的に取り組んで参ります」と述べている。

三菱重工とシエラスペースの両者は、長年にわたりISSプログラムを通して蓄積してきた三菱重工の技術・知見を「オービタル・リーフ」開発に活用するべく協業を続けていくとしている。

  • 「オービタル・リーフ」完成予想図

    「オービタル・リーフ」完成予想図(2035年) (C)シエラスペース (出所:三菱重工 Webサイト)