ナイスジャパンとAmelia Japanは3月17日、「自然言語モデルから顧客行動を予測する、対話型AIソリューションやチャットボットへの活用について」と題して、企業と顧客との接点におけるカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の向上に向けたセミナーを開催した。両社はチャットボットやコンタクトセンターにとどまらない、AIを活用した顧客対応の例について語った。
クラウド型のコンタクトセンター向けプラットフォーム「CXone」を展開するナイスジャパンは、デジタルチャネルを活用した企業と顧客との接点づくりを支援している。近年の生活者の消費行動がデジタル化する中で、生活者から企業への問い合わせの内訳を見ると19%がコンタクトセンターであり、81%がアプリやWebサイトなどのデジタルチャネルとなっているという。
このような環境においては、従来の電話を主としたコンタクトセンター業務によってカスタマージャーニーを的確に捉えることは難しい。そのため、デジタルチャネルを経由する生活者の行動や要望も適切に収集し、分析する必要がありそうだ。
こうした背景を受けて同社では、会話型AIソリューションである「Amelia」を搭載した「CXone SmartAssist」を2021年8月にリリースした。同製品は音声およびテキストのどちらにも対応しており、顧客とのあらゆる接点において顧客の課題解決を支援するという。
ナイスジャパンの社長である安藤竜一氏は「CXone SmartAssistについて、今年中に金融機関を対象に2社への導入を目指す。さらに来年以降は、Webを窓口とした顧客情報が潤沢なEC事業者などへの導入を進める予定だ」と展望を語った。
「CXone SmartAssist」に搭載している「Amelia」は、Amelia社が7年以上にわたって開発を行っている会話型AIソリューションだ。同ソリューションはヒトの脳の仕組みをまねてAIを構築しているという特徴を持つ。機能ごとに特化したさまざまなメモリを組み合わせて対話を進めるため、文脈に適した顧客対応が可能だという。
一般的なチャットボットは、直前の質問に対して事前に設定した定例の文章を返す一問一答形式の仕組みのものが多い。一方で「Amelia」は、顧客と自然な会話をするための知識を持つSemantic Memoryや顧客の感情を推定して応対を変えるAffective Memoryなどを搭載しているため、各場面の状況に応じた顧客対応が実現できるとのことだ。
同ソリューションは基本的にテキストベースで情報を処理するが、音声認識エンジンや音声合成エンジンと組み合わせることで、音声での問い合わせにも対応可能となる。そのため、Webなどのデジタルチャネルだけでなく、電話チャネルなど顧客とのあらゆる接点に利用可能だ。多くの企業で、問い合わせ担当者はテキストでの問い合わせに対してチャットボットを、電話での問い合わせに対してIVR(Interactive Voice Response:自動音声応答システム)をそれぞれ設定する場面が多いだろうが、これが不要となる。
同ソリューションのもう1つの特徴は、「インテントスイッチ」だ。同ソリューションの処理プロセスは、顧客の発話内容から以降の業務プロセスを振り分ける「業務振分処理」と、実際に業務プロセスを実行する「業務対応処理」の2つの段階に分けられる。
「業務振分処理」に用いられるインテント学習モデルは、顧客応対の情報を「業務対応処理」中も引き継げるため、業務プロセスの実行中であっても異なる業務へ対応し、その後以前の業務を再開できる。例えば、金融機関の問い合わせ対応の場面において、振込の手続きを進めている途中で残高照会の対応をして、振込の手続き案内に戻るようなイメージだ。これにより、さらに人間のカスタマーサポートに近い電話応対が可能となる。
Amelia Japanの浅田逸朗氏は「Amelia」の導入事例について、スペインの銀行であるBankiaを紹介した。同行ではスマートフォンアプリからの問い合わせ窓口として同ソリューションを導入しただけでなく、銀行員からの問い合わせ窓口としても活用しているとのことだ。
安藤竜一氏は「にわかには信じられないかもしれないが、現実的にこのような顧客対応がAIでできるような時代になっている。顧客体験を軸にしたデジタルトランスフォーメーションを各社が構築できるようになるための支援ができれば嬉しい」と述べて、セミナーを結んだ。