経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2021年3月14日、「ベンチャー企業のノベルクリスタルテクノロジー(埼玉県狭山市)が、“第3世代”半導体と呼ばれているβ-Ga2O3(酸化ガリウム)製半導体の基板となる酸化ガリウムウェハの欠陥を10分の1に低減することに成功した」と公表した。

この開発事業は、NEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」の開発事業の中で、次世代半導体を開発する事業として、ノベルクリスタルテクノロジーが採択されているもの。その事業開発の中で、ノベルクリスタルテクノロジーが「佐賀大学との共同研究開発によって、ウェハの欠陥を10分の1に低減できた」と公表した。

ノベルクリスタルテクノロジーは、2015年に電子部品事業などを手掛けているタムラ製作所からカーブアウトしたベンチャー企業で、その後に情報通信研究機構(NICT)から研究開発成果などの技術移転を受けて、酸化ガリウム製ウェハの開発を手掛けてきた。

今回のNEDOが公表した情報によると「戦略的省エネルギー技術革新プログラムで、ノベルクリスタルテクノロジーはβ-Ga2O3ショットキーバリアダイオード(SBD)を製品化する開発に取り組んでいる」と説明する。

ノベルクリスタルテクノロジーでは、すでにβ-Ga2O3エピウェハを100mmまでスケールアップしたエピ成膜装置を開発し、第2世代β-Ga2O3の100mmエピウェハとして製造・販売を行ってきたが、この100mmエピウェハにはデバイスの耐圧特性を劣化させるキラー欠陥が10個/cm2 程度存在するため、大型のデバイスを作ることができず、電流値は10A程度に制限されていたという。

この課題の解消を目指して、佐賀大学との共同研究により、キラー欠陥の原因が主にエピ成膜中に発生する“特定の粉体”らしいモノであることを突き止め、エピ成膜条件を改良することにより、キラー欠陥を従来の10分の1以下の0.7個/cm2まで低減した第3世代β-Ga2O3の100mmエピウェハを実現したという。

そして「この開発した直径100mmエピウェハを基に、β-Ga2O3ショットキーバリアダイオードを試作し、電気的性能とキラー欠陥密度を評価し、優れた性能を確認した」という。今後は、試作したショットキーバリアダイオードの電気的性能を評価し、さらなる改良を目指す模様だ。

  • 開発した第3世代酸化ガリウムの直径100mmエピウェハを用いて試作したショットキーバリアダイオード

    開発した第3世代酸化ガリウムの直径100mmエピウェハを用いて試作したショットキーバリアダイオード(出典:ノベルクリスタルテクノロジー)

この結果、電車や産業機器、電気自動車などの100A級パワーデバイス向けの酸化ガリウム半導体の開発に向けて大きく前進したといえそうだ。

これが実現されると、電力損失が小さいパワーデバイスが実用化されて、省エネルギー化が大きく進むことになると考えられている。

ノベルクリスタルテクノロジーは「今後はβ-Ga2O3の直径100mmエピウェハの製造ラインを構築し、早期にそのウェハの販売を始めたい」としている。