鹿児島県長島町と東京都市大学(都市大)は3月15日、化石研究家の宇都宮聡氏により、長島町獅子島東部に分布する、約1億年前の中生代白亜紀の地層「御所浦層群」から、2021年11月に発見された多量の恐竜化石を含む骨化石密集層(ボーンベッド)が、何層にも渡り周辺に広く分布しており、福井県勝山市や兵庫県丹波市などに匹敵する量の脊椎動物化石を含有する「ボーンベッド」である可能性があることを発表した。

同成果は、鹿児島県長島町と都市大 理工学部 自然科学科の中島保寿准教授らの共同研究チームによるもの。

ボーンベッド(bone bed)のベッドは“地層”を意味し、日本語では「脊椎動物化密集層」と呼ばれている。直訳の“骨のベッド”から類推できるように、骨や骨の破片を多量に含む特定の地層または堆積物であり、ウロコ、歯、糞石、あるいは有機物の屑を含み、リンに富むことが多いことが知られている。日本国内における恐竜を含むボーンベッドとしては、福井県勝山市、石川県白山市、兵庫県丹波市などが知られている。

今回のボーンベッド発見者である宇都宮氏は、企業に勤務するかたわら、趣味である化石採集をライフワークとし、九州初の首長竜「サツマウツノミヤリュウ」(鹿児島)や巨大モササウルス類(大阪)、植物食「イグアノドン類」(鹿児島)など、重要な化石を多数発見してきたことで知られる人物。サツマウツノミヤリュウについては、大阪市立自然史博物館の外来研究員として学術研究・記載論文の記載まで行っているという。

2021年11月21日、宇都宮氏は長島町獅子島東部の海岸に分布する白亜紀陸成層(約1億年前)において周辺の地層を調査中、地層表面に、多数の大型爬虫類の骨片が露出しているのを発見。古生物学を専門とする都市大の中島准教授による骨化石の分析の結果、恐竜化石であることが判明した。

発見された化石のうちの1つは、骨壁の厚さから大型の脊椎動物の骨の一部であると推定され、顕微鏡観察から、骨の内部に網目状の血管が張り巡らされていることが確認されたほか、異なる2種類のタイプの組織の複合体である「線維層板骨(Fibrolamelar bone)」でできていることも明らかとなり、これらの特徴は、恐竜類や哺乳類など一部の成長の早い大型の動物にのみ見られるものであることから、今回の化石群は、白亜紀という時代設定も考慮して恐竜類と同定されたという。

研究チームによると、獅子島東部の約1億年前の白亜紀層は、恐竜など大量の脊椎動物化石を含んでいる可能性が高いと期待されるという。約1億年前の白亜紀中ごろは、現代の生態系を構成するさまざまな生物が飛躍的に進化した時代であったとされているほか、その進化のホットスポットがアジアにあったという研究もあり、今回のボーンベッドは、現代の生態系のルーツとなる生物たちと、絶滅した恐竜たちとの相互作用を理解する上で重要な化石産地となることが期待されるという。

今後、長島町は、2022年春ごろに宇都宮氏と中島准教授を中心とする「獅子島地区大型脊椎動物化石発掘調査団(仮称)」を結成し、6月ごろから周辺地域の調査および発掘を順次進めていく予定としている。また、発掘された化石は、調査・研究が終了した段階で長島町に寄贈され、鹿児島県立博物館で展示される計画だという。

  • 獅子島ボーンベッド形成期のイメージ

    (上)獅子島ボーンベッド形成期のイメージ。(古生物イラストレーター川崎悟司氏が提供したもの) (c) 川崎悟司。(下2点)今回発見された恐竜化石片を含むボーンベッド。下左の矢印は骨の分布を示したもの。下右は切片画像で、恐竜の特徴となる組織構造が示されている (出所:都市大Webサイト)