大阪大学(阪大)とトッパン・フォームズは3月15日、新たな銀塩焼結接合技術を開発し、無垢銅基板同士の接合において、35mm×35mmの大面積接合を実現し、接合強度もはんだを上回る50MPa以上の数値を達成したと発表した。

同成果は、阪大 産業科学研究所(産研) フレキシブル3D実装協働研究所のチン・テントウ特任准教授(常勤)、同・菅沼克昭特任教授とトッパン・フォームズの共同研究チームによるもの。詳細は、材料科学技術全般を題材とした学術誌「Journal of Materials Science & Technology」に掲載された。

環境問題的な観点から、あらゆる産業においてさらなる省エネへのシフトが求められており、それを実現する技術の1つとして次世代パワー半導体に注目が集まっている。しかし、半導体はその特性上、微細化・小型化が進むほどに回路に流れる電流が密になり高温となるため、高い耐熱性を持ちつつも、同時に排熱もできる接合材料が求められている。

そうした中で次世代の接合材料として期待されているのが、はんだよりも高耐熱、高熱伝導である銀で、すでに一部の自動車や鉄道向け半導体チップの接合に採用されているという。しかし、パワー半導体の組み立てにはチップサイズよりも大きな面積を持つ、基板やヒートシンクといった部材の接合も必要になり、それらを銀で接合することは、「面積が大きくなるほど接合材に含まれる溶剤や分散剤などが抜けずに残留する」、「銅が被着材の場合、接合途中で酸化されてしまう」といった課題から難しいとされてきた。

そこで研究チームは今回、これまでのプリンテッドエレクトロニクスの研究開発で培ってきた「銀塩インク」を接合材として転用し、適切なプロセスで接合することでこれらの課題の解決を試みることにしたという。

銀塩インクは紙やプラスチックへの配線形成のために開発されたため、不純物が残留しにくい成分で構成されているのが特徴であり、これを適切な条件で前処理(乾燥)した後に熱圧を加えることで、大面積の銅板の接合を実現したという。

確認された接合強度は50MPa以上で、その値ははんだを使用した接合の2倍以上という強度だという。前処理条件を最適化することで緻密な銀焼結層となった結果、内部への酸素の侵入が抑えられ、銅との接合界面が酸化されずに金属結合していることも確認されたという。

なお研究チームでは、今後もパワーデバイスや高速大容量通信、さらにウェアラブル、ヘルスケアなどに必要なセンシングデバイスなどに関する産学連携を進め、早期の社会実装を目指すとしている。

  • 今回開発された技術によって接合された銅板

    今回開発された技術によって接合された銅板(左)とその接合面(右)。銅板が曲がってしまうほどの力を与えないと剥がすことができない (出所:トッパン・フォームズWebサイト)