ベルギーの独立系半導体研究機関であるimecが、新しいインパルス超広帯域無線(IR-UWB)技術となる送信機チップを、ハイブリッド開催となった半導体業界最大級の国際学会「ISSCC 2022」にて披露したことを発表した。

同チップはimecの300mmクリーンルームで28nm CMOSプロセスを用いて製造された。チップ面積は0.155mm2で、消費電力10mW未満を達成しつつ、1.66Gbpsのデータ転送速度を実現したという。この際のエネルギー効率は5.8pJ/bitであり、これはWi-Fiよりも少なくとも1桁向上しているという。

今回、高速伝送を低消費電力で実現するために、オールデジタルフェーズロックループ(AD-PLL)とデジタル制御パワーアンプに関するimecの専門知識に基づいて、より複雑な変調方式を活用して開発されたとするほか、これらのハイブリッドインパルス変調方式を可能な限り省フットプリントで実現するために、低電力の送信機と組み合わせて、高エネルギー効率かつジッタの少ないリングオシレータを開発したとしている。

imecのUWBのプログラムディレクターであるChristian Bachmann氏は、UWBが短距離での高データ転送速度と低消費電力、および小フォームファクタを組み合わせた幅広い新しいアプリケーションを実際にサポートできることを証明しているとしており、「一致するユースケースには、没入型AR/VR体験を可能にする次世代のスマートグラスが含まれており、神経科学研究は、これらの新しい技術から恩恵を受ける可能性がある分野である」と例を挙げ、UWBがWi-Fiテクノロジーの候補になる可能性があるとしている。

なお、実際にこの技術が広く活用できるようになるためには、さらなる技術の成熟に向けた研究と標準化を進める必要があるとしており、imecではUWB R&Dプログラムへのパートナーの参加を促していくとしている。

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  • imecが開発した低消費電力かつ高速伝送が可能なIR-UWB送信機チップ (C)imec