日本マイクロソフトは3月15日、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)における同社の体制や取り組みのほか、ソニー、コマツ産機、リコー、旭化成の最新DX事例を紹介した。
この中で日本マイクロソフト 業務執行役員 エンタープライズ製造事業本部 製造営業統括本部長 横井伸好氏は、「日本の製造業は世界のデジタル化を牽引している状況ではない」と日本の製造業DXの遅れを指摘。一方、「日本の製造業のDXが本格化してきているのを日々感じる」と、コロナ禍でDXに進展がみられるとの認識を示した。
同氏は、日本の製造業に向けて同社が提供できる価値は、世界中のマイクロソフトに貯まったDXのノウハウ、Teams、AI、IoT、ホロレンズなどのDXを実現するテクノロジー、SurfaceやXbox、ホロレンズなどを提供している製造業としてのマイクロソフト自身のDXのノウハウ・知見の3つだと語った。
横井氏よると、マイクロソフトが製造業向けにフォーカスするシナリオとしては、サステナビリティの実現、従業員の働き方改革、新しい方法でお客様とつながり(デジタルを使ったカスタマータッチポイントの強化)、アジャイル工場の実現(IoTやAIなどを活用したスマート工場の実現)、レジリエント・サプライチェーンの構築(変化を前提としたサプライチェーンの構築)、イノベーションの加速(リードタイムの少ない効率的な製品開発)、セキュリティの合理化・強化、データとインテリジェンスの活用に集約できるとした。
また、 執行役員 常務 エンタープライズ製造事業本部長 渡辺宣彦氏は製造業のDXを加速させるアプローチとして、「デジタル・フィードバック・ループ構築支援」(個別最適化されたシステムが扱っているデータが相互にフィードバックされるを開放データ活用環境の実現)、「新しい製品・サービスのアジャイル開発支援」(実際に稼働するシステムをつくって運用するためにプロセス、方法論、環境(DevOps環境)を支える新しい製品・サービスのアジャイル開発支援)、「従業員のデジタル武装DXスキル獲得支援」(デジタル人財のDXスキル獲得支援)という3本柱で支援していくとした。
その後、製造業のDX事例として、ソニー、リコー、コマツ産機、旭化成の4社が紹介された。
ソニーはLinkBudsによるフリーハンドコミュニケーション
ソニーは、スマホとブルートゥースで接続するヘッドフォン「LinkBuds」を利用し、ハンズフリーコミュニケーションを実現している。そして、同社はMicrosoft Soundscapeを活用した、頭の向きを認識した立体音響ナビゲーションを実現しようとしているという。
同社は医療など現場作業の人向けにLinkBudsを使った目と手をふさがないコミュニケーションを提供しようとしている。具体的には、LinkBudsをタップすることで、スタッフ間のコミュニケーションを実現するという。この実現に向け、スマホに搭載するアプリをマイクロソフトのAzure CommunicationとChatbotをベースに、両社4カ国のエンジニアにより、Azure DevOpsを活用して共同開発。このアプリを使えば、グループと1:1の会話を簡単に切り替えられるという。ソニーでは、このソリューションを使った医療現場での実証実験を来月から開始し、今後は建築や製造現場に用途を広げていくという。
リコーはデータ利活用
リコーでは、Microsoft 365で生成された仕事の仕方のデータに基づいて新しい仕事の仕方が進んでいるかを検証。また、工場のデータ、顧客のMFPやプリンタの稼働データをAzure Synapse Analyticsで分析。工場では何かが起こってから対処するのではなく、起こることを予測して工程制御することを目指すという。一方、顧客のMFPやプリンタの稼働データでは、分析結果を製品の品質向上に役立てるという。同社では今後、この取り組みをものづくり以外の領域にも広げ、業務改革を実現していくという。
コマツ産機はAIを活用した生産設備の予知保全
コマツ産機は、製造機器を設備の保全を事前検知する取り組みを行っている。機械に取り付けた通信端末から稼働情報をクラウドに上げ、そのデータを機械学習し、予知保全につなげようとしている。具体的には、モーターの振動情報から振動レベルの傾向管理による予兆検知に取り組んでいる。そして、この分析の機会学習のモデル構築にノーコードで利用できるAzure Machine Leraningを活用しているという。今後は採用部品を領域を広げていく予定だという。
旭化成はデータ基盤の構築と人材育成
旭化成はデータ基盤の構築と人材育成に取り組んでおり、データマネージメント基盤構築では、Azure Data Factory Azure DevOps、Azure Synapse Analytics、Azure Data Lake、Azure SQL Databaseなどを活用し、扱いが難しい非構造データの収集・分析を実現するという。
人材育成では、データを活用できる人材を育てるため、データのリテラシーのレベルをLevel1~5まで定義し、E-Lerning教材を提供している。Level1~2は、全社員の取得を目ざしており、すでにLevel1は全世界で23400人の社員が取得しているという。今後は中心となるLevel3のデジタル活用人材(業務で活用できる)の育成に力を入れていくという。