アドビは3月16日から17日にかけて、年次カンファレンス「Adobe Summit」をオンラインで開催する。

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「Adobe Summit」はデジタルエクスペリエンスをテーマにしたグローバルイベントだ。過去には、アドビの最新テクノロジーやデジタルを活用した顧客体験向上のユースケース、実験的プロジェクトの成果などが紹介されてきた。今回は講演やワークショップなど、展示230以上のセッションが用意されており、一部の講演には日本語の字幕が付く。

  • 2022年の「Adobe Summit」の概要

  • 2022年の「Adobe Summit」の日本語字幕付きセッション、出所:アドビ

2022年のキーテーマは、「Make the digital economy personal.」(デジタルエコノミーにおけるパーソナライゼーション)となり、今回のカンファレンスでは主に、マーケティング向けのデジタルサービスを統合した「Adobe Experience Cloud」にまつわる情報が提供される。

3月15日には、同イベントの基調講演の発表内容から、ソリューションや新機能・既存製品のアップデート情報を紹介する報道関係者向けの説明会が開かれた。説明会の内容を紹介したい。

説明会に登壇した、同社DXマーケティング&セールスデベロップメント本部 執行役員 本部長の祖谷考克氏は、まず、顧客データプラットフォームの「Adobe Real-Time Customer Data Platform」(Adobe Real-Time CDP)のアップデート内容を説明した。

  • アドビ DXマーケティング&セールスデベロップメント本部 執行役員 本部長 祖谷考克氏

「Adobe Targetとの連携により、Webサイトやモバイルアプリにパーソナライズされたコンテンツをミリ秒単位で配信できるようになる。また、米One Trustのプラットフォームとの連携によりデータガバナンスが強化される。Adobe Real-Time CDPに顧客の同意データを直接取り込んで、プライバシーに配慮したパーソナライズ体験を実現できる。このほか、地理的に分散したサーバーを使用してデータ収集、エンリッチメント、コンテンツ配信を高速かつローコードで利用できるReal-Time CDP Connectionsも提供する」(祖谷氏)

  • 「Adobe Real-Time CDP」のアップデート内容

アドビが提供するAI「Adobe Sensei」にも、「クロスチャンネルの予算最適化」「販売機会の予測」「商品レコメンデーションとライブサーチ」「インテリジェントな予算予測と配分」といった新機能が追加される予定だ。

クロスチャンネルの予算最適化では、「Customer Journey Analytics」を通じて、企業はオンラインとオフラインのキャンペーンのパフォーマンスを統合的に把握・評価することができる。

販売機会の予測では、「Adobe Real-Time CDP」で得られたインサイトにリード予測およびアカウントスコアリングを適用することで、見込み客の購入確度やコンテンツで働きかける適切なタイミングを判断できる。同機能は、2022年後半に「Adobe Marketo Engage」でも利用できるようになる予定だ。

商品レコメンデーションとライブサーチでは、Adobe Commerceと連携してオンラインショッピングの買い物客に、行動や売れた商品、商品の特長、ビジュアル要素、人気のトレンドに基づいて関連商品を提案できる。ライブサーチはリアルタイムのカタログデータとAdobe SenseiのAI機能を組み合わせて、関連性が高く、パーソナライズされた検索結果を表示させる機能だ。

インテリジェントな予算予測と配分にあたっては、過去のデータとアドビのAttribution AIサービスによるリアルタイムのインサイトを組み合わせる「Marketing Mix Modeling」という予測モデルが用いられる。同モデルがマーケティング費用とキャンペーンのパフォーマンスを分析して、チャネルを横断した適正なマーケティング予算の判断をサポートするという。

  • 「Adobe Sensei」の新機能

企業のメタバースの取り組みのサポート内容も発表された。アドビは手始めに、Adobe Creative CloudとAdobe Experience Cloudの機能を統合して、3Dを含めた没入的な体験ができるコンテンツの制作を支援していく。

また、企業がメタバースを活用するうえでの戦略をまとめたプレイブックも提供する。祖谷氏はプレイブックについて、「メタバース領域において、どのようにプロダクトデザインを効率化し、エンドユーザーにどのような体験を提供していけばいいか。そのためには何が必要なのかを支援する戦略ガイドとなる」と説明した。

  • アドビのメタバース支援の取り組み

この他、カンファレンスでは、ヘルスケア業界向けのプラットフォームとして「Adobe Experience Cloud for Healthcare」も発表される。同プラットフォームは、米国のHIPPA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)の要件に準拠しており、医療データの保護と活用を両立できるような形で、患者や保険加入者、医療従事者のパーソナライゼーションを実現するものだ。

  • 「Adobe Experience Cloud for Healthcare」の概要

アドビがこれらの機能やサービスに注力する背景には、アドビの独自調査「Trust Report」がある。同調査で適切なタイミングでコンテンツが提供されることでブランドに対する信頼性が高まる一方、不適切なパーソナライズがブランドや企業の信頼喪失につながることがわかったため、アドビはEコマースや電子決済、デジタルマーケティングなどを含めたデジタルエコノミーにおいて、パーソナライズした顧客体験を重要視する。

祖谷氏は、「名前を間違える、無関係な広告・オファーを送る、プライバシーの安全性に不安を抱かせるアクションをとるなど、不適切なパーソナライズは消費者とブランドの関係性を損なう。当社では、あらゆるチャネルで、あらゆる顧客に対して、リアルタイムにパーソナライズを実現するPersonalization at Scaleの実現を目指す」と語った。