京セラは、3月9日から12日まで東京ビッグサイトで開催されていた「2022国際ロボット展」で、AIの活用により少量多品種生産の現場において、対象品種が変わってもティーチング作業を必要とせず、ロボットが自律的に稼働する「AI協働ロボットシステム」の紹介を行った。
同システムは、協働ロボットのコントローラー内で自律的にリアルタイム処理を行う「エッジシステム」と、現場のデータを基に学習する「クラウドシステム」で構成されており、この2つのシステムにAIを用いることによって、対象品種や周辺状況が変わってもロボットが自律的に稼働することを可能にしているという。
ブースでは、エッジシステムの特徴を示した「3種類のボールをトレイに入れ分けるデモ」、プログラミングを必要としないティーチングを可能とした「簡単ティーチングデモ」、AI技術を活用し表裏や向きを識別してコンベア上に並べる「ばら積みピッキングシステムのデモ」などが披露されていた。
「3種類のボールをトレイに入れ分けるデモ」では、トレイの場所を入れ替えた場合でも、再ティーチングを行わずに、ロボットが自律的に種類ごとにトレイにボールを入れ分けるデモが行われていた。
これはロボットに搭載されているエッジシステムがボールの硬さや重さを判別し、エッジシステム側でどこに入れるかを判断するため、再ティーチングを行わずとも入れ分けが可能なのだという。
硬さや重さに応じて、ハンドの力を調整する作業も自律的に行うことができるとのことだ。
また、「簡単ティーチングデモ」では、アプリからの簡単なティーチングでロボットが作業を行う様子を紹介していた。
アプリからライブラリを用いて、ピックするものを指示し、アームの経路はクラウドシステムに搭載されたAIによって自律的に決定する。
今回のデモでは“文房具”のライブラリを用いたが、実際にクライアントに納入される際には、クライアントごとに調整したライブラリを提供していくという。
また、“消しゴム”というグルーピングでピッキングすることや、“ピンク色の消しゴム”といった色などの特定のものを指定することも可能だという。
「ばら積みピッキングシステムのデモ」では、ロボットハンドに搭載されているカメラで撮影した製品の画像から、AI技術を用いて対象物や裏表、向きを同時に識別し、ラインに指定された向きで並べるというデモが紹介されていた。
識別した向きから、自律的にロボットアームを動かして、指定された向きに並べることができる。
京セラは、ロボット自体(ハードウェア)の開発は行っていないが、提供する際には、ハードウェアの提案も含めたAI協働ロボットシステムとしての提供を予定しているという。
同社のロボティクス事業部長の森田隆三氏は、対象品種の変更や状況の変化に対して自律的に稼働できる同システムの特徴から「少量多品種の製品を扱い、単純作業の仕事がさまざまにあるクライアント様にお使いいただけると思っています。ティーチングも特別なプログラミングを必要としないので、ロボットエンジニアがいない現場でも活用が可能です。少量多品種を扱っているがゆえに今まで自動化を諦めたクライアント様に活用いただきたいと思っています」とした。
なお、AI協働ロボットシステムは2022年10月に事業化を目指しており、事業化した際には、工場、物流、農業などをターゲットに国内での販売を行っていく計画だという。