ノベルクリスタルテクノロジーは3月14日、佐賀大学と共同でキラー欠陥を従来の10分の1に低減させた第3世代酸化ガリウム100mmエピウェハの開発したことを発表した。

  • 酸化ガリウム

    試作された第3世代β-Ga2O3100mmエピウェハを用いたショットキーバリアダイオード。最大チップサイズは10mm×10mm (出所:NEDO Webサイト)

GaNやSiCと比べても大きなバンドギャップを有する酸化ガリウム(β-Ga2O3)は、次々世代のパワー半導体材料として期待されている。

すでにノベルクリスタルテクノロジーでは、100mmのβ-Ga2O3エピウェハを成膜可能な装置を開発し、第2世代β-Ga2O3100mmエピウェハとして製造・販売を行ってきたが、デバイスの耐圧特性を劣化させるキラー欠陥が10個/cm2程度存在しており、大型のデバイスを作ることができず、電流値は10A程度に制限されていたという。

そこで今回、キラー欠陥の原因の調査を行い、高品質化を目指す研究を進めたという。その結果、キラー欠陥の原因が主にエピ成膜中に発生する特定の粉体であることが判明。エピ成膜条件を改良することで、キラー欠陥を100mmエピウェハとして従来の10分の1以下の0.7個/cm2まで低減することに成功したという。

実際に、そのエピウェハの膜厚分布とドナー濃度の測定を行ったところ、膜厚分布は10μm±5%程度、ドナー濃度分布は1×1016cm-3±7%程度と、パワーデバイス用として問題ないレベルであることが確認されたほか、10mm×10mmのショットキーバリアダイオードを試作し、その電気特性とキラー欠陥密度を評価したところ、順方向特性としては、電流は0.8V程度から流れ始めて一定に上昇し、正常な順方向特性が得られていることが示されたとする。また、最大電流値は測定機器の上限の関係で50Aまで調べられたが、研究チームでは最大で300A~500A流すことが可能だとしている。さらに、逆方向特性としては、200V程度加えてもリーク電流は10-7A程度に抑制することができていることが確認され、今後は、デバイスに電極終端構造を設けることで、600V~1200V程度の耐圧が得られると推定されるとしている。

  • 酸化ガリウム

    第3世代β-Ga2O3エピウェハの膜厚分布とドナー濃度分布 (出所:NEDO Webサイト)

この試作ショットキーバリアダイオードの逆方向特性歩留まりは51%で、その値と今回実証に用いた電極サイズから、キラー欠陥密度は0.7個/cm2程度と推定されたという。これは、100A級のβ-Ga2O3パワーデバイスを、80%程度の歩留まりで製造可能なことを意味しているという。

  • 酸化ガリウム

    第3世代β-Ga2O3エピウェハで試作されたショットキーバリアダイオードの順方向と逆方向の電流 - 電圧特性 (出所:NEDO Webサイト)

なお、ノベルクリスタルテクノロジーでは、今回開発に成功した第3世代β-Ga2O3100mmエピウェハの製造ラインを構築し、早期に販売を開始するとしているほか、今後、ドナー濃度および膜厚の指定範囲の拡大を進めるともに、キラー欠陥のさらなる低減と大口径化に取り組んでいくとしている。

また、NEDO事業として、すでにトレンチ構造を導入した1200V耐圧の低電力損失のβ-Ga2O3ショットキーバリアダイオードの実証にも成功しているとのことで、今後、今回開発されたウェハを用いた1200V耐圧トレンチ型ショットキーバリアダイオードの量産技術の構築も進めていく予定としている。