日立プラントサービスは3月14日、医薬品やファインケミカルの次世代生産プロセスとして、製品開発から商用化までの期間を短縮するとともに、高精度な反応を実現するマイクロリアクタシステムを開発したと発表した。
マイクロリアクタは、数10から数100μm程度の微小流路内で原料を迅速に混合し、反応温度を精密制御することが可能な連続生産方式の化学反応装置であり、医薬品やファインケミカルなどの製造効率を向上させることが期待されている。
今回発表したマイクロリアクタシステムは、日立製作所が開発した基盤技術をもとに、日立プラントサービスが製品化に向け技術開発を行ってきたもので、製品開発、量産検証、商用生産の用途ごとに装置をラインアップするとともに、独自の流路設計と現在開発中の反応解析サービスにより1:1の等流量比混合から1:20までの高流量比混合までの幅広くかつ高精度な反応を実現するとしている。
また、従来のバッチ式プロセスに比べて、商用生産プロセス確立の期間を短縮できるため、原料・廃棄物の抑制も可能で、接液部はすべてシングルユース(ディスポーザブル利用)とすることで、多品種少量生産における前ロットからのクロスコンタミネーションリスクを大幅に抑制できるとしている。
なお、日立プラントサービスでは、2021年8月から、東京工業大学と、フラボノイドオリゴマーの製造に同マイクロリアクタシステムを適用する共同研究を開始しており、従来バッチ式プロセスでは商用スケールでの生産実現が困難な新たな反応プロセスを見出したという。また、2015年11月から2019年9月まで、国内の大手製薬メーカーと、バイオ医薬品を低分子で化学修飾するプロセスに同マイクロリアクタシステムを応用する共同実証試験を行い、修飾数の制御精度が向上することを確認したとしている。
今後も、こうしたアカデミアやクライアントとの協創を通じてマイクロリアクタシステムの検証・製品化と用途開拓を進めるとともに、反応解析サービスの開発・実用化も進め、2022年度中の提供開始を目指すとしている。
今回開発したマイクロリアクタシステムの実機は現在、日立プラントサービスの協創・研究開発拠点「環境イノベーションセンタ」に設置されており、見学およびディスカッションを行うことが可能。また、武田薬品工業が湘南研究所を開放することにより設立された、企業発のサイエンスパークである「湘南ヘルスイノベーションパーク」内にもマイクロリアクタシステムのラボ機を設置し、同パークに入居する企業が試用できるように調整するともしている。