東京農工大学大学院 農学研究院応用生命化学部門の殿塚隆史 教授の研究チームは、物産フードサイエンスと共同で、ミツバチの悪玉腸内細菌として知られる「Frischella perrara」が生産するオリゴ糖分解酵素の構造と性質を解析し、このオリゴ糖分解酵素は機能性オリゴ糖として知られる「1-ケストース」をほとんど分解できないことを発見し、そのメカニズムを明らかにしたことを発表した。
なお、同研究成果は査読付きジャーナル「Applied Microbiology and Biotechnology」に3月10日付で掲載された。
ケストースは機能性オリゴ糖として知られ、ヒトが摂取することにより腸内でのビフィズス菌の増殖を促し、整腸作用があることが知られている。また、ヒトだけでなく、花の乏しい時期にミツバチに与えると、ミツバチの健康を維持増進する効果があることが分かっており、今回の研究では、ケストースがミツバチの悪玉腸内細菌の増殖を抑えていると考え、代表的な悪玉腸内細菌として知られるFrischella perraraが生産するオリゴ糖分解酵素の立体構造とその性質を解析した。
その結果、Frischella perraraのオリゴ糖分解酵素の立体構造は、ヒトの善玉腸内細菌であるビフィズス菌の一種「Bifidobacterium longum」のオリゴ糖分解酵素の立体構造とよく似ていることが確認できたという。
また、Frischella perraraのオリゴ糖分解酵素はケストース以外の糖と比較してケストースの分解活性が最も低いことが判明したとしている。
さらに解析したところ、Frischella perraraのオリゴ糖分解酵素にはビフィズス菌酵素には見られない特徴的な構造があり、それが酵素の性質に重要なことも明らかにしたとしている。
ハチミツにはケストースが含まれており、Frischella perraraはミツバチの栄養状態が悪い時にミツバチ腸内で増殖することが報告されている。研究チームは、今回の研究のFrischella perraraのオリゴ糖分解酵素がケストースをほとんど分解できないという結果から、Frischella perraraはケストースでは増殖できず、ケストース以外の糖が腸内に増えたことをきっかけとして増殖するという可能性が示唆されたとしている。