情報通信研究機構(NICT)は3月11日、金融庁と協力して、金融分野の文書を日本語と英語の間で双方向に高精度に翻訳できるAI翻訳システムの開発に成功したことを発表した。
今回、NICTと金融庁が連携し、金融分野において官民協力により業界団体単位でまとまったデータを確保したことで、提供データを効率よく活用し、日本語と英語の間のAI翻訳の精度が向上したという。具体的には、金融庁の率先垂範のもと、金融関係の複数の業界団体から大量の翻訳文書を収集し、NICTはこの翻訳文書をAI用の学習データに変換し、さらに精製したデータを深層学習に用いて高精度のAI翻訳システムを開発した。
同じ原文に対する従来の汎用翻訳システムによる訳文と上記の金融分野向けの高精度AI翻訳システムによる訳文の品質の比較を行ったところ、最高品質である金融専業翻訳者レベルに達した割合は、前者で約2割であったが、後者では約5割と大きく増加し、NGレベルの割合は半減するなど、圧倒的な高精度化を実現したという。
NICTでは、この金融分野に特化した高精度AI翻訳システムについて、3月1日に民間事業者に技術移転を開始した。同システムは実用性が高いことから、直ちに普及し、広く利用され、金融分野での英語での情報の受発信が増進されると期待されるとしている。
NICTは今回の金融分野での成功事例をもとに、さらなる分野拡大を目指すとしている。また、金融関連の翻訳文書収集に関する金融庁との連携も継続し、次々と登場する新語・新概念への対応を始め性能改善のエコ・システム化を実現していく構えだ。