米商務長官のGina Marie Raimondo(ジーナ・レモンド)氏は3月8日(米国時間)、ロシアへのハイテク製品輸出に対する米国の規制に反対する可能性のある中国企業に厳しい警告を発したと米国の複数メディアが報じている。
それらによると、米バイデン政権は、半導体やその他の先進技術をロシアに供給し続けることで、米国の制裁に反対している中国企業に対して、米国製の製造装置やソフトウェアを用いて製造された製品の輸出を禁止することで、そうした中国の半導体企業などを実質的に閉鎖させる可能性があるとレモンド長官がNew York Times(NYT)のインタビューで述べたという。
現在、米国、EUおよびその他の複数の政府が、ロシアのウクライナ侵攻への対抗措置として、ロシアとベラルーシへの先進的な半導体を含む特定のハイテク製品の販売を禁止している。例えば米国の対ロシア・ベラルーシ輸出規制は、米国企業だけでなく、米国のソフトウェアまたはテクノロジーを使用して製品を製造している世界中のすべての企業に域外適用される。これは米国製半導体製造装置を使って半導体を製造している中国企業にも適用されることとなる。
中国はロシアとの貿易関係強化を進めてきており、中国政府はロシアがウクライナへの侵攻を開始して以降もロシア寄りの立場を示してきており、レモンド長官は、対ロ輸出規制に違反する中国企業は厳しい罰則に直面するだろうと述べたとされるほか、中国の大手ファウンドリSMICが製造したチップがロシアに提供されていることが判明すれば、米国は米国製の半導体製造装置やソフトウェアを使用できないようにする」と名指しでSMICに対して警告したとも伝えられている。
すでに米国のエンティティリストに記載済みのSMIC
米商務省は2020年12月18日、SMICをエンティティリストに追加登録し、10nm以下の微細プロセスでの製造に向けた半導体製品製造に対する輸出規制を行った。しかし、SMICが提供してきたプロセスは14nmプロセス以上のものばかりで、制裁としての効果はでていないとみられてきた。そのため、米商務省は、ほとんどの米国製半導体製造装置に対するSMICへの輸出を禁止する方向で検討を進めており、10nm以下のプロセス向けの半導体製造装置ではなく、10nm以下のプロセスを行うことが可能な(capable of)装置と変更することで、14nmプロセス以上の半導体製造装置の事実上の輸出禁止を図ろうとしているという。また、中国のNANDサプライヤであるYMTCに対しても、半導体製造装置の輸出を禁止すべきだとの意見が、一部の連邦議会議員から商務省に寄せられているとも言われている。
米バイデン政権は12月16日(米国時間)、SMICへの輸出制限強化の是非について商務省をはじめとする複数の政府機関の高官らと非公式で協議を行ったが結論は出なかったという。しかし、半導体製造装置の対中輸出制限の拡大を同盟国と一緒に取り組む必要があるという点では見解が一致したともしている。
自由貿易を守るためにWTOが定めた国際ルールでは、輸出禁止措置を実施できるのは、自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認められる場合や、国際平和や安全の維持に背く場合などに限られており、12月16日の時点では、輸出規制強化のための新たな口実を見出だせなかったが、現状のロシアに対して中国企業が支援を行われていることが判明すれば、明白な輸出禁止の口実となると米国は考えているものと思われる。