学習院大学とSpace BDは3月9日、「宇宙利用」を通じた文理融合の学びと実践の場の提供を通じ、変化の激しいこれからの社会で活躍する人材を育成することを目指すカリキュラムの共同開発に向け協定書を締結したことを発表した。
この産学連携により、学習院大学では2023年度より、地球を含むすべての天体・宇宙空間の開発および利用を研究対象とした全学部生を対象とした全学共通科目「宇宙利用論」を開講するという。
すでに両者は2021年度より、今回の連携を見据え、3日間の課外特別授業「宇宙ベンチャー概論」を実施するなど、カリキュラムの共同設計に向けた動きを協力して進めてきており、この課外特別授業は2022年度も実施する予定だとしている。
今回のSpace BDとの産学連携による「宇宙利用論」の開講に至った経緯について、学習院大学の渡邉匡人 教授は、「米国航空宇宙局(NASA)を中心とした『アルテミス計画』をはじめとして、新しい宇宙利用の研究分野が立ち上がろうとしており、より広く宇宙を利用するというところに拡大しつつある。さらに、アルテミス計画では、民間の力を活用するという動きがでている。そうした中で、宇宙利用を考えるうえで、技術的・科学的な側面だけでなく、さまざまな立場からの問題がでてくるであろうということを感じ、学内の法学部 法学科の小塚荘一郎 教授と相談・議論し、宇宙資源を利用するという取り組みが学生の学びに重要かつ有意義なテーマであると気づいた。誰も今まで利用したことのない、宇宙空間、宇宙資源を利用していくという中で、どんな問題が起こるのか、あるいはそんな問題の中から、何を解決しなければいけないのかを抽出する、そしてそれをどうやって解決するという学びの要素が多く、かつ自由に考えることができるテーマであるということで、全学部の学生に共通した認識としてもってもらいたいと考え、全学共通科目として開講することにした」と説明する。
また、宇宙の資源を活用するということは、地球上での現実の生活に対する問題提起にもなり、その課題解決を考えるうえで有効な手段にもなるともしており、学生たちが自分たちの新しい考えを創出していくことを期待していると、その狙いを語る。
Space BDと産学連携をしたことについては、「日本のニュースペースを代表する会社の1つであり、そうした企業と連携することで、日本のニュースペースという最先端な動きをリアルなものとして学生に提供できることに意義があると考えた」とするほか、「大学の学問は体系を学ぶものだが、学生目線に立つと、なぜ自分たちがこれを学習する必要があるのか、という動機付けの部分が難しい。そこを産学連携という形で、学んでいくことの先に、どういう課題、自分たちにとっての問題があるのかを感じてもらうことにより、学生が主体的な学びをする効果が期待される」(小塚教授)と、宇宙利用の最先端で、宇宙に対する想いを持って仕事をしている人たちの生の声を直接、学生が聞くことにより、将来、どういった夢を持って、どうやってそれを実現するのか、という夢を実現するというキャリアの組み立てにもつながることを期待するとしている。
全学共通科目としたことについては、「宇宙というのは開発の対象であったが、最近はその用途が語られるようになってきた。そうすると文系や理系の枠を超えて、誰しもが宇宙を活用していく時代になり、それを使うことが常識となっていく。今の学生世代は、小さいときからスマホを当たり前のように使いこなしている。宇宙もスマホと同じように使いこなしていく時代がくること、その使いこなし方を肌で感じてもらうことを期待している」(同)と、その理由を説明する。
なお、2023年度の宇宙利用論の開講の前に、両者では先述の課外特別授業「宇宙ベンチャー概論」のほか、Space BDがこれまで小中高生などを対象に行ってきた取り組みをベースとした「スペースDay(仮)@学習院大学」の企画提案、国内研修プログラムなどの実施を2022年度に進めていく予定としている。
また、宇宙利用論については、全部で15回の授業が実施される予定で、宇宙ビジネスに実際に携わっている人や、宇宙で使われる機器を開発する人、宇宙旅行のようなエンターテインメントの人などが講義を行うほか、グループに分かれたワークショップの実施なども行うとしており、「宇宙を利用することに向けて、今どういうことが行われているのかを知り、それをどう展開していくのか、というところまで考えてもらうものにしていくことを考えている」(渡邉教授)としている。