台湾の鴻海科技集団(Foxconn)が2021年8月にMacronix International(旺宏電子)から取得した台湾・新竹科学園区の6インチ(150mm)ウェハファブの生産品目は、当初予定していたSiCデバイスではなく、Macronixの顧客向けに6インチシリコンウェハによるロジックデバイスの受託生産を行う方向で協議が進んでいると台湾メディアが報じている。
これまで鴻海は、数十億NTドルを投じて設備を更新し、2024年までに月産1万5000枚規模でSiCデバイスの生産を行うとしていたが、台湾業界関係者によると、SiC対応の半導体製造装置の入手が困難で、納期が1年以上かかる上に、SiCデバイスの製造は、技術的ハードルがシリコンデバイスよりも高く、すぐに生産を始めることは難しいとの判断から、当面の間、旧来のMacronixの顧客に向けて、従来のロジック半導体の受託生産を再開するよう持ち掛けているという。しかし、かつての顧客はすでに製造委託先を8インチの別のファウンドリに変えており、6インチのフォトマスクは処分済みで、鴻海の思い通りには進みそうにはない。なお、鴻海は、Macronixに対して6インチ1枚当たり3%のライセンス料を支払う契約だあるとされるほか、化合物半導体を長年研究してきた台湾国立交通大学のGuo Haozhong教授に半導体研究所の所長就任を依頼し、今後もSiCの研究開発を続けるとしている。
2025年に売上高2000億円を目指す鴻海と国巨の合弁半導体企業
また、鴻海科技集団については、同社と台湾の受動電子部品メーカーの国巨(Yageo)が2021年5月に設立した合弁半導体企業「国創半導体(Guochuang Semiconductor)」が、2025年に500億NTドル(約2000億円)の売上高(初年度売上高は20億NTドル)を達成することを目指し、半導体技術者の数を現在の60人から200人へと増員することを目指し、台湾のファブレスメーカーから人員の引き抜きを始めたとする報道もなされている。
国創半導体は、事業拡大の詳細を明らかにしていないが、電子機器の電力消費を管理し、バッテリの寿命を延ばすのに役立つ小型アナログICが最初のターゲットとしているのではないかと噂されている。ICを国巨の積層セラミックコンデンサなどの受動電子部品のセールスチャネルに載せ、同じ顧客に販売することで相乗効果を発揮したい模様である。
なお、鴻海科技集団は、事業の多角化の一環として、あらゆる機会を見出して半導体事業の拡大を図っている。2月にも、インドのVedanta Groupと提携し、インドにおける半導体製造に向けた覚書を締結している。一方、日本では、シャープが親会社の鴻海あるいは他社が買収しやすいように、半導体事業を子会社のシャープ福山セミコンダクタとして切り出したが、結局、鴻海はシャープの半導体事業を買収することはなく、福山キャンパスの一部の建屋が三菱電機に売却されただけで、シャープ福山は、本拠地をふたたび奈良県天理市に戻し、社名もシャープセミコンダクタイノベーションと変更するにとどまっている。