ソフトバンクと北里大学は3月9日、慶應義塾大学の協力の下、高齢者のフレイル(身体や認知機能が低下した虚弱状態)予防に向けた取り組みとして、スマートフォンで取得したデータからフレイルリスクを判定できるアルゴリズムの開発に向けた実証実験を開始したことを発表した。

フレイルは、加齢により心身が老い衰えた状態のことだが、日々の活動や定期的な運動による身体機能の維持などを行うことで予防できるという。一方で、高齢者がフレイルを認知する機会が少ないことや、フレイルを判定するデータが測定時点の限られた情報であること、予防や改善のための機会が限られていることなどから、フレイルが進行していても認知できず、改善に向けた対応が遅れたり、不可逆的な状況に陥ってしまったりしていることが危惧されているとのこと。

そこで3者は、フレイルに関連する因子を連続的にセンシングできる身近な手段として、スマホを活用したフレイルリスクの自動判定および改善傾向の可視化を実現することを目指して、実証実験を開始。同実証実験は、入院患者や通院患者、地域住民を対象に、2021年12月に開始して約1年間実施する予定。

入院患者や通院患者、地域住民においてはフレイルの自覚に基づいた行動変容や、自治体や企業、専門家による効果的な早期介入、医療分野においては全身状態の改善や悪化のモニタリング、さまざまな治療を行う上でのリスクの層別化などにつなげるべく、研究を進める方針だ。

具体的には、歩行速度や歩行の安定性、身体活動量に加え、社会的なフレイルに関する情報などをスマホから自動的かつ連続的に取得し、AI(人工知能)を活用して、フレイルの有無やフレイルリスクのレベルを自動で判定できるアルゴリズムの開発を行う。

アルゴリズムの開発では、医療分野における教師データとして、多くの医療情報や高精度の動作解析装置を併用し、わずかな状態の変化も検知できる仕組みを研究する。このアルゴリズムについては、2022年度中の完成を目標に早期実用化を目指す。また、フレイル状態を可視化できるアプリの開発も行い、高齢者が自身の健康状態を認知できる取り組みも行うとのことだ。