FIRST Japanはこのほど、小学校低学年の子供たちがSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)を学べる教育プログラムとして、「FIRST LEGO League Explore」のオンライン全国大会を開催した。全国大会には各地の予選を勝ち上がった12チームとチャリティーイベントで招待された5チームが参加した。
同イベントは小学1年生から3年生までを参加対象としている。動くレゴモデルとポスターを作成し、自分たちが日常生活で感じる課題や新たな発見を発表するイベントだ。2005年に開始し、現在では世界70カ国から毎年約13万人が参加する。
毎年さまざまなテーマで開催されており、今年のテーマは「輸送」に決定した。子ども達は保護者やメンターと一緒に、変化する社会の中で持続可能な「未来の輸送」について考え、レゴでの表現に挑戦した。
NPO法人であるFIRSTは、ディズニーおよびルーカス・フィルムと共に、子ども達にSTEM教育を届けるためのチャリティープログラム「STARWARS Force For Change」を実施している。今大会では、地理的または経済的にSTEM教育を受けられなかった子ども達や、これまでSTEM教育を受ける機会が少なかった女子児童を中心に参加チームを募集し、選考で選ばれた5チームが「スター・ウォーズ チーム」としてオープン参加した。本稿では、スター・ウォーズ チームの発表内容をお届けしたい。
1組目に紹介するのは、「ドロイドチーム」だ。長距離トラックドライバーの話を聞き、1日で12時間程度勤務する日もあるほか、休日や年末年始にも働いていると知ったことから、人と環境に優しい荷物の輸送について考えたという。
そこで考案したのが、集荷センターから各地の駅へ電車で荷物を運び、その先は自動運転車両やロボットがラストワンマイルの配送を担うシステムだ。これにより、トラックドライバーの負担軽減が見込める。ロボットの代わりに自転車での配送や駅に備え付けたロッカーでの受け取りも可能とすることで、二酸化炭素排出量の削減も狙えるのではないかと考えたとのこと。
荷物を受け取る人も一連の配送サイクルに積極的に関わる仕組みとすることで、労働力不足解決にも貢献することを狙っている。発表者は「将来はAIやロボットを自分で作れるようになって、誰もが暮らしやすい世界にしたい」とコメントしていた。
続いては、「フォースと共にあらんことを」の発表を紹介する。同チームは災害時の輸送をテーマに定めた。地震や台風の発生時には、倒木や建物の倒壊などで道路の交通が寸断される危険性がある。こうした課題に対して彼らは、アザラシ型のロボットを考案した。
アザラシを模したロボットの前脚はクランク構造になっており、回転することで地面を這うように進む。これにより、段差や凹凸のある道でも支援物資を輸送できるようになる。
飛行機やヘリコプターなどの輸送方法も検討したようだが、運転するために熟練の技術が必要であることから、地上を移動するロボットを考案したとのことだ。
「ライトセーバーチーム」は、双子がチームとして出場した。人と生物が仲良く共存できる世界をレゴで表現したという。「動物の形態や生態に応じて、それぞれに適した人や荷物を輸送する方法があるはず」とのことだ。例えば、キリンは高い場所の荷物にも対応でき、ペンギンは寒冷地での輸送に対応できるといった具合だ。
さらに、恐竜をロボットで再現することで、制御可能な輸送手法になるのではとも考えたようだ。ティラノサウルスやトリケラトプスを模したロボットを作成し、人の移動や荷物の輸送の一端を担ってもらうのである。
発表を聞いた審査員は「ほかの多くのチームがドローンやAIの活用を考える中で、動物との共存に着目した非常にユニークな例だ」とコメントしていた。
各チームの発表を聴講したFIRST Japanの岩坪佑樹氏は、「コロナ禍で各チームが集まる機会が少ない状況での開催となったが、どのチームもモデルに独自の工夫を盛り込んだとても良い発表だった。次に会う時にはもっと成長した姿を見せてほしい」と激励のコメントを送った。
また、FIRST Japanの理事である和田直士氏は「皆さんの発表を見て、未来が明るい方へ向かうと確信できた。今回の学びを止めることなく、さらなる成長につなげてほしい」と賛辞を述べていた。