日本電信電話(NTT)、東日本電信電話(NTT東日本)、飛島建設の3社は3月3日、建設現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する新会社として「ネクストフィールド」を4月1日に設立すると発表した。

新会社では、NTTグループが持つICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の強みやアセットと、飛島建設が持つ建設現場に精通した知見を掛け合わせて、建設現場に必要なICT業務のBPO(Business Process Outsourcing)などを事業として展開する。

  • 記者会見の様子

    記者会見の様子

ネクストフィールドの商号には、次なる(Next)建設現場(Field)を実現するという抱負が込められている。建設現場のDX支援を通じて生産性と安全性を確保し、持続可能な社会や地方創生に貢献するとともに、次世代への変革を目指す。資本金は4.9億円で、飛島建設とNTTグループは50%ずつ株式を保有する。

具体的な事業内容は、「建設現場のDXをサポートするBPO事業」「建設現場向けICTサービスの提供」「ECプラットフォーム事業」だ。

  • ネクストフィールドの事業概要

    ネクストフィールドの事業概要

建設現場のDXをサポートするBPO事業としては、主にICT業務の現場監督を提供する。DXに取り組みたい建設会社を対象として、建設現場の経験や知識とICTのノウハウを持った人材(IT監督)が現場のDXをサポートする。各社のニーズに合わせた適切なソリューションの導入から保守運用までワンストップで対応する。

  • ICT現場監督の事業イメージ

    ICT現場監督の事業イメージ

ICTサービスとしては、建設現場に必要とされるサービスを自社開発のものから他社開発のものまで幅広く取りそろえているという。現場の課題を的確に抽出し、新たなサービスの企画や開発につなげるとのことだ。

開発中のサービスの例として、1人の現場責任者が複数の現場をかけ持ちして管理するような場面を想定した、監視カメラの中央制御システムがある。これにより、わざわざ現場に行かなくてもリアルタイムに複数の現場を確認できるようになるとのことだ。このような、ICT機器を用いたサービスを広く展開する予定だ。

  • ICTサービス・業務改善サービスの例

    ICTサービス・業務改善サービスの例

ECプラットフォーム事業では、さまざまな立場の建設関係者が利用可能なオープンなプラットフォームの提供を予定している。建設現場ではまだまだアナログな購買業務が主流とのことだが、同サービスにより、建設資材だけでなく建設現場に必要な道具や保険なども取り扱える環境の構築を目指す。

請求の一本化や請求データ管理の一元化を実現することで、バックオフィス業務の負担軽減にも寄与する狙いがあるとのことだ。

  • ECプラットフォーム事業の例

    ECプラットフォーム事業の例

同社は将来的に、建設現場に有効なソリューションの提供による業務自動化や、建材調達のオープン化を実現して、現場本来のやるべき業務(Quality、Cost、Delivery、Safety)に集中できる環境を実現する。その先に、持続可能な建設産業への変革を見据えているという。

飛島建設の代表取締役社長である乘京正弘氏は「飛島建設の設立記念日である3月3日に、このような発表ができることをうれしく思う。当社とNTTグループとの連携により、ネクストフィールドは建設現場に唯一無二のサービスを届けられる会社になるだろう。社会課題の解決や地域創生への貢献など、新たなゼネコンの使命とあり方を具現化していきたい」と力強くコメントした。

  • 飛島建設 代表取締役社長 乘京正弘氏

    飛島建設 代表取締役社長 乘京正弘氏

また、NTT東日本の代表取締役社長を務める井上福造氏は「コロナ禍以降、リモート環境で機能するサービスや、人手を代替するロボットや機械の導入が特に強く求められるようになり、こうしたトレンドは今後ますます加速するだろう。中小規模の企業も事業継続のために対応が必要となっており、そのためには高品質かつ安価な通信が必須だ。先日当社が発表した企業向けマネージド・ローカル5Gサービス『ギガらく5G』はその切り札になるはず」であると述べた。

さらに「人の代わりに動くロボット、さまざまなサービスを提供するクラウド、それらをつなぐ5G通信など、道具はそろい始めた。これらを宝の持ち腐れにしないためにも、プロの知見とノウハウは不可欠であり、建設現場においては飛島建設が強力なパートナーであることは間違いない」と続けて、新会社設立の喜びを語っていた。

  • NTT東日本 代表取締役社長 井上福造氏

    NTT東日本 代表取締役社長 井上福造氏

ネクストフィールドの社長に就任する予定の大堀裕康氏は「建設産業は大手の数社を筆頭に裾野が広がっており、多数の建設会社によって社会インフラが支えられている状況だ。その大半を占めている中堅・中小規模の建設会社に向けてDXを支援していきたい。5年後には単年度で50憶円の売り上げを目指す」と意気込みを見せた。

  • ネクストフィールド代表取締役社長に就任予定の大堀裕康氏

    ネクストフィールド代表取締役社長に就任予定の大堀裕康氏