国立成育医療研究センターは3月2日、子どもの発達に着目したビッグデータ研究として、延べ1万6627人分のデータを調べたところ、「冬生まれの子の方は『おすわり』『ひとり歩き』など運動発達が早い」、「ゆっくりと言語発達する子は男の子で多い」などの知見が得られたことを発表した。
同成果は、同センター 分子内分泌研究部の松原圭子 上級研究員、同 鳴海覚志 室長、ファーストアセントの服部伴之氏らによるもの。詳細は、医学雑誌「The Journal of Pediatrics」に掲載された。
生物の中でも未熟な状態で生まれてくるヒトの新生児は、思考、感情表現、歩行、器用な手先動作などヒト特有の能力が未発達な状態のまま生まれ、さまざまな能力を発達させていくことが知られている。身長や体重などの数値で表現可能な成長とは異なる発達だが、その順調さを判断する目安として「発達マイルストーン」と呼ばれる指標が使われており「4か月までにあやすと笑うようになる」「8か月までに1人で座れるようになる」といった項目があり、その基準データは世界保健機構(WHO)の調査や厚生労働省(厚労省)の定期調査(乳幼児身体発育調査)のデータが用いられてきた。
一方で、近年はスマートフォン(スマホ)の普及に伴い、育児をサポートする機能を持つアプリも登場。ファーストアセントも発達マイルストーンが初めて達成された日付を記録できるアプリ「パパっと育児@赤ちゃん手帳」を提供しており、今回の研究では、2014年~2019年の期間に、同アプリで記録された発達記録のうち、2歳ごろまでに達成される20項目について延べ1万6627人分のデータを分析し、現在広く用いられている基準データ(厚労省の乳幼児身体発育調査)との比較が行われた。
その結果、あやし笑いを除く19項目については、基準データとおおむね一致した分布をとることが判明したという。
また、発達マイルストーンの達成時期に関連する子どもの特性を、性別、生まれた時の季節(春夏秋冬、春生まれは3月~5月、夏生まれ6月~8月、秋生まれ9月~11月、冬生まれ12月~2月)、栄養方法(母乳中心、混合栄養、粉ミルク中心)の3つの特性から分析したところ、身体的な基本動作の粗大運動発達に分類される7項目(「寝返り」「おすわり」「はいはい」「つかまり立ち」「つたい歩き」「ひとり立ち」「ひとり歩き」)のデータ分布が生まれた時の季節により違っており、どの項目も夏生まれの子よりも冬生まれの子の方が早く達成することが判明したとするほか、男女差に関する解析から、言語発達に関連したマイルストーンでデータの分布に違いがあり、言語発達がゆっくりとした子は男の子により多いことが判明したとする。
なお、研究チームでは、今回の成果について、現在、発達の遅れを検出する唯一のスクリーニング機会は節目月齢(4か月、10か月、1歳半など)での乳幼児健診だが、今回のような発達の「見える化」によって、発達の遅れのリスクのある子どもをより早期に、より確実にみつけることで、乳幼児健診を補助できる可能性があるとしているほか、近日中にアプリに、養育者が子どもの発達状態をリアルタイムに把握できる「見える化」を実装する予定ともしている。