オンラインゲームの開発および運営を手掛けるコロプラはこのほど、恵比寿ガーデンプレイスタワー(東京都渋谷区)から東京ミッドタウン(東京都港区)へオフィスを移転し、 稼働を開始した。新オフィスのデザインは、専門家の監修による科学的根拠に基づく感染症対策と、円滑なコミュニケーションが図れる空間作りに注力したという。この度、記者向けにオフィス訪問の機会を頂いたので、同社新オフィスのこだわりをお届けしよう。
ゲーム開発においては、エンジニアだけでなくデザイナーやシナリオライターなど、関与する職種が多い点が特徴だ。クリエイティブなゲーム開発にはコミュニケーションが不可欠である。そこで同社では、以前から従業員のコミュニケーション活性にこだわったオフィス設計に取り組んできた。
一方、2020年の初めから続くコロナ禍がオフィスの必要性を見直すきっかけになったという。同社の取締役CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者) 兼 CHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)である原井義昭氏は「科学的根拠に基づいたオフィス設計にすることによって、従業員のクリエイティブな活動環境を支援しつつも、円滑なコミュニケーションを取れる空間を目指した」と説明した。
オフィスの移転先が東京ミッドタウンに決定したのは2020年の12月ごろだ。2021年1月に感染症対策を基本とするコンセプトを策定し、同年4月にデザイン設計事務所が決まった。9月から建築に着手し2022年2月にグランドオープンを迎えたスケジュールである。
オフィスフロアの建設においては1坪あたりの構築費40万円に加えて、感染症対策費用として約1.7憶円を確保したという。マスクの着用と手洗いは必須の予防策としながらも、設備面でさらなる感染リスクの低減を目指したとのことだ。
具体的には、一部のドアを自動ドアとした上、HEPAフィルター空気清浄機を導入した。さらに、床材には抗ウイルス性能や抗アレルギー効果が確認されているリノリウムを採用したほか、立ちミーティング台など一部の什器にもリノリウムを用いているという。また、排気ダクトを追加することで換気量を増強している。
同社のコーポレート本部で経営管理部部長を務める森林太郎氏は「リノリウム材は亜麻仁油などの天然素材から製造される建材という点でカーボンニュートラルであり、SDGsの観点からも優秀だ。感染症対策だけではなくSDGsにも資するオフィスとすることができた」とコメントしていた。
さてここからは、実際の新オフィスを紹介しよう。オフィスは全体的にシンプルながら、丸みを帯びたデザインを基調としている。極力段差を無くし、ユニバーサルデザインとなっているそうだ。
会議スペースには、パナソニックの清潔・快適な空気環境を提供する「エアリーソリューション」を導入している。具体的には、図上部に設置されたルーバーは空気を噴出しており、周囲の空気を巻き込みながら下方向の気流を作り出す。下方向への均一な面気流(ダウンフロー)を発生させることで、空気中に浮遊する飛沫やエアロゾルを床へ落とすのだという。
さらに、ルーバーから噴出する空気はHEPAフィルターを通して毎分1万2000リットル程度浄化している。0.3マイクロメートル以上の粒子を99.97%以上捕獲する性能を持つとのことだ。
また、オンライン会議ブースや集中作業用のスペースとして、コクヨの「ワークポッド」を設置している。同製品は出社している社員同士で、パーテーション越しにマスクを外した会話が可能だ。コロプラでは定期的に上司と部下が1 on 1で面談する時間を設けているとのことで、そうした場面での利用を見込んでいる。
ユニークなスペースとして、ゲームコーナーが設けられている。研究開発などでの利用を目的に、レトロゲームから最新機種まで取りそろえているという。福利厚生として社員が利用できるスペースだ。
「クマ図書館」には、専門書だけでなく雑誌や漫画、ビジネス書など約3000冊がそろっている。在宅勤務者も貸出可能な、オンライン管理システムを導入している。
また、「Kuma SPA」と名付けられたマッサージルームには、国家資格を有するプロのマッサージ師が常駐している。従業員であれば誰でも無料で就業時間内にマッサージを受けられるとのことだ。
フリースペースでは、試験的に開始した「無限バナナ」が目を引く。こちらも福利厚生の一環だ。従業員はバナナを好きなタイミングで好きなだけ食べられる。バナナは一人分ごとに房から分けられ、皮をむいて食べるため感染症対策としてもちょうど良いのだという。