アマゾン ウェブ サービス(AWS)ジャパンは3月1日、クラウド移行支援プログラム「ITトランスフォーメーション パッケージ」に関する記者説明会を開催した。
同プログラムは2021年4月に日本独自のプログラムとして発表された。クラウド移行における評価、計画立案、移行という3つのフェーズにおいて、AWSが支援策を提供する。ユーザーは無償で同プログラムを利用できる。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン事業開発本部 事業開発統括本部長 佐藤有紀子氏は、2021年に同プログラムを提供した企業は100社を超えると説明した。
「ITトランスフォーメーション パッケージ2.0」に進化
今回、同プログラムを提供する中で、ユーザーから寄せられた声に応える形でサービスを拡充し、「ITトランスフォーメーション パッケージ2.0」として提供が開始された。佐藤氏によると、「クラウドに移行してCO2排出量を削減したい」という声が多かったという。
今回追加されたサービスは以下の通りだ。
- 評価フェーズ:ユーザーのインフラに基づくクラウド移行によるCO2 排出削減量試算
- 準備フェーズ:EBA People PartyによるCCoE(クラウド推進組織)のあり方の検討支援
- 準備フェーズ:クラウド移行プロジェクトの 規模に応じた支援
- 移行フェーズ: IT Divestによる IT機器の買い取り
- 移行フェーズ:AWS Customer Carbon Footprint Toolの提供
「EBA People Party」は、CCoE立ち上げを支援するためのワークショップで、組織変革の意思決定者を対象に、2日間行われる。具体的には、プロダクト志向組織とアーキテクチャへ変革するステップをイメージして、初期のCCoE の役割を討議する。
また、IT Divestを利用することで、クラウド移行により使用しなくなった機器のリサイクルが可能になり、コストの抑止効果も得ることができる。「AWS Customer Carbon Footprint Tool」は、ユーザーの利用実績をもとに、CO2 排出量のモニタリング、分析、将来予測を提供する。
ITXパッケージでクラウド移行を決めた南海電鉄
続いて、南海マネジメントサービス 情報サービス部長 兼 南海電気鉄道 イノベーション創造室 DX推進部 課長 佐藤貴俊氏が、 AWS ITトランスフォーメーションパッケージの活用について、説明した。
南海電鉄グループでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を「データとデジタル技術を駆使し、新たなビジネスモデルを創出できる会社へ 変革すること」と定義し、既存プロセスの深化に取り組む「業務効率化型DX」とありたき姿に向けた変革である「新価値創造型DX」という2つのDXをを両輪で進めることを掲げている。その重点施策として、プライベートクラウドの保守期限到来に合わせてハイブリッドクラウドへのシフトに取り組んでいる。
佐藤氏はクラウド移行に取り組むにあたり、「オンプレの経験しかなかったことから、AWSを知ることから始めた」と語った。その一環として、2021年9月から、ITX パッケージの活用を開始した。
評価フェーズでは、AWSに移行することで得られる経済的メリットを可視化するメニュー「クラウドエコノミクス」を利用したという。その結果、6年間のトータルコストとして25.1% 削減の試算が得られた。佐藤氏は、「クラウドへ移行することによってコストが減るという肌感覚が、当社のリアルな数値によるレポートにより確信に変わった」と語った。これらのデータは、クラウド移行に関する費用対効果を社内に説明する上での根拠として利用したとのことだ。
加えて、「マイグレーション レディネス アセスメント」では、移行体制の確立、技術取得、利用料精算、バックアップポリシー、BCPへの反映など、組織として新たにクラウド特有事項に対応すべきテーマが多いことが明確になったそうだ。
佐藤氏は、ITX パッケージの評価フェーズのサービスを活用したことで、クラウド移行先としてAWSをパートナーとして選定したと述べた。同氏は、選定の決め手として、インフラコスト削減効果への期待、今後のDX施策の推進に対応可能な豊富なサービスメニュー群、取り組みを通じて感じた信頼感を挙げた
「ITXパッケージのようなサービスは有償では利用が難しいので、は無償で利用できたのはよかった。正直なところ、ITXパッケージは無償なのでたいしたことはないのではと思っていたが、いい意味で裏切られた」と、佐藤氏は話していた。
現在は、移行計画立案フェーズに入っており、移行プロジェクトチームを立ち上げたのち、AWS利用ガイドラインの作成と共通基盤の構築に取り組んでいる。今後、移行対象サーバに関する詳細移行計画を策定していくという。
移行計画はAWSプロフェッショナルサービスを活用して習得したノウハウに基づき、内製化で推進していく予定だ。ベンダーに依存しない自立した運営体制による推進により、クラウドコアメンバーとしての高い技術レベルの習得を目指す。
そのほか、佐藤氏はグループ全体のDX施策として、新サービス、データ分析、機械学習などにおいてもAWSの活用を計画しており、グループ各社で管理しているサーバもクラウドに移行していくと語っていた。