半導体市場動向調査会社である仏Yole Développementは、SWIR(短波長赤外線)イメージセンサの市場規模は、2021年の3.18億ドル規模から、今後は年平均成長率(CAGR)52%で成長し、2027年には39億ドルへと拡大するとの予測を発表した。

SWIRイメージング技術は、レーザーターゲットを定める目的として主に軍事防衛分野を中心に使用されてきた経緯があり、当該セグメントの2021年の市場規模は1億8900万ドルで、今後CAGR3%程度で成長していくことが期待される。2番手市場はマシンビジョンで、2021年の市場規模は9400万ドル、CAGR25%で成長し、2027年には3億6000万ドルまで成長することが見込まれる。マシンビジョン用途ではプラスチックや食品の選別、ソーラーパネル検査、コンテンツ検査など、今後多くの用途が出てくることが期待されるという。

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    SWIRエリアイメージセンサの2021年および2027年の用途別市場規模 (出所:Yole)

また、SWIRは霧や雪、太陽光、夜間などといった条件でも安定した画像取得ができるため、自動車(ADAS向け)にも採用される見込みで、2024年までに400万ドル規模で市場が立ち上がり、2027年には2100万ドルに達する見込みだという。

有機ELディスプレイは現在使用されているNIR(近赤外)よりもSWIR波長に対して透明であるため、スマートフォン(スマホ)のアンダーディスプレイ3Dセンシング用途にも採用されるという。最初の製品は2023年にリリースされ、2027年までに32億ドル市場となる可能性がある。また、アンダーディスプレイに加えて、より強力な照明の使用が可能となるため、NIRと比べて3Dセンシングソリューションの利用範囲と信頼性を向上させることも期待されるという。

SWIRカメラ業界におこるパラダイムシフト

2021年時点でSWIRの主要プレーヤーは、SCD、Sensors Unlimited、Teledyne FLIRで、この3社だけで世界市場の過半を占める出荷台数を担っている。これらの企業は、戦略的な目的で政府の支援を受けてSWIR技術の開発を行っている防衛産業の主要企業の子会社である。しかし、このようなレガシーなSWIR業界にパラダイムシフトが起ころうとしている。

現行のスマホ向けアンダーディスプレイ3Dセンシング分野は、STMicroelectronicsが過半を超すシェアを有し、それをソニーが追撃し、2020年の2億2500万個の出荷数のうち95%をこの2社で占めている。両社は、従来の3DイメージングをSWIRイメージングと一体化することで、SWIR市場に事業領域を拡大しようとしており、仮にこうした動きにより、SWIRイメージセンサが低価格化されれば、数年以内に出荷個数が急増する可能性があり、軍事向けのレガシーだったSWIR市場は消費者向けの新たな市場へと転身を果たすこととなるという。

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    軍事用途のレガシーSWIRイメージング市場とコンシューマ用途の3Dイメージング市場の一体化の予測 (出所:Yole)

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    SWIR業界へのソニーとSTMicro参入による主役交代のイメージ (出所:Yole)

なお、日本では、ソニーがエリアセンサ、浜松ホトニクスがリニアセンサに参入している。防衛産業の盛んな欧米では、SWIRイメージャーメーカーが多数あるが、いずれコンシューマ用途が拡大し、STMicroとソニーが主役になるとYoleは見ている。

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    SWIRイメージセンサメーカーの分布図 (出所:Yole)