花王とPreferred Networks(PFN)は2月28日、「仮想人体生成モデル」のプロトタイプを共同開発したことを発表した。

仮想人体生成モデルは、健康診断などで得られる身体に関する項目から、ライフスタイル(食事、運動、睡眠など)や性格傾向、嗜好性、ストレス状態、月経などの日常生活において関心の高い項目まで、幅広く多種多様な1,600以上の項目を網羅的に備え、これらがどのようなパターンで現れるのかを示すことができる統計モデル。

  • 「仮想人体生成モデル」の多種多様な項目の例

    「仮想人体生成モデル」の多種多様な項目の例(出典:花王)

ある項目のデータを入力すると、別の項目の推定データを出力することが可能で、入出力する項目は、備えられたすべての項目から自由に設定すること可能だという。

同モデルを活用し、例えば、健康診断結果など手元にあるデータから、内臓脂肪量を統計的に推定し、内臓脂肪量以外のさまざまなデータと組み合わせることで、その人のライフスタイルや運動・食事習慣などに合わせた最適なソリューション提案につなげるといったことなどに応用できるという。

また、逆説的に現在の状態からもし2kg体重が少なかったと仮定すると、どの項目がどの程度異なるかを推定し、それぞれの人に適した健康目標の策定などに活用することもできるという。

これらのことを活用し、簡易検査サービスや、企業・自治体の受診勧奨、介入商品サービスのパーソナライズといった用途が期待できるとしている。

花王のエグゼクティブ・フェロー兼PFNフェローの東京大学人工物工学研究センター、丸山宏 特任教授によれば、同モデルは、花王研究所が保有するデータや、レセプトデータ、他項目横断試験などのデータを組み合わせて、巨大なデータセットとして学習を実施したものだという。

しかし、このアプローチでは、項目数などが異なるさまざまなデータを組み合わせているためにデータセット間の質の異なりや巨大な欠損部分の取り扱いが課題となる。

この課題に対し、PFNが独自の試行錯誤を重ね、一定の予測精度を保ったまま、多種多様な項目の推定を可能にしたとのことだ。

なお、この技術については、花王とPFNの両社で特許を申請しているという。

両社は今後、協業する複数の事業者と2022年中の実用化を目標に検証を進め、花王がPFNの協力を受ける形で、2023年初頭を目標に同モデルをAPI経由で提供する、新規デジタルプラットフォーム事業の開始を目指していくとしている。

  • 「仮想人体生成モデル」のアプリケーション開発事業者による活用イメージ

    「仮想人体生成モデル」のアプリケーション開発事業者による活用イメージ(