ロジックデバイスはプロセスの微細化が進むにつれて、製造の複雑さとパターン形成の困難さで歩留まりがなかなか立ち上がらず量産が計画通りに進まないケースが増えてきている。IntelはCPUやGPUをTSMCに製造委託する動きを見せているほか、Samsung Electronicsも先端プロセスで長期にわたって歩留まりが低迷しているという噂がでている。そして、ここにきて微細化競争で先頭を走るTSMCにも異変が生じている模様である。
TSMCの3nmプロセスは、FinFET構造を用いてリスク生産を行っているが、一方のSamsungは、TSMCやIntelに先駆け、ソース-ドレイン間のリークを抑えて、電流駆動力を増すGate-All-Around(GAA)構造を用いることを公言している。しかし、両社とも生産立ち上げに苦戦しており、歩留まりが低迷したままで、今後予定したスケジュールで量産できそうにはないと、半導体業界内部からの情報として複数の台湾・韓国メディアが伝えている。
TSMCの3nm量産は2022年下半期を予定
TSMCは、3nmプロセスのリスク生産を2021年末より開始しており、2022年下半期から量産を始める計画だが、まだ3nmプロセスでの製造には多くの問題があり、予定通りの生産能力を提供できない可能性があるという。このため、3nmプロセスでの半導体生産を委託している顧客は、当面、5nmや4nm(N4/N4P/N4X)プロセスを用いざるを得ない状況だという。
一方、Samsungの3nmプロセスは、FinFET構造よりも複雑なGAA構造であり、より複雑なプロセスのため、多くの問題に直面し、立ち上がりに苦戦しているという。
Samsungは4nmプロセスも量産に苦戦か?
また、Samsungは4nmプロセスでも苦戦しており、例えばQualcommのSnapdragon8 Gen1の歩留まりは35%程度であり、Qualcommは、自社のエンジニアをSamsungに派遣して歩留まりの向上を目指すとともに、製造委託先をTSMCへ切り替えていると、複数の海外メディアが報じている。別の情報によると、Samsungから発売されたAMDのRDNA2アーキテクチャ採用の4nm Exynos2200プロセッサのパフォーマンス評価は期待どおりではないようで、その製造歩留まりもSnapdragon8 Gen1よりも低いという。
Samsungのファウンドリの歩留まり情報に不正か?
さらに、Samsung Foundryの歩留まりが低迷している5/4/3nmプロセスによる製造歩留り情報が不正に操作された可能性があること、かつ歩留まり向上に向けた資金が正しく使われなかった疑惑から、会社側が同部門の経営陣を対象に調査に乗り出したことも韓国/台湾メディアが伝えている。Samsungは調査自体は認めているというが、具体的な情報は明らかにされていない。場合によっては大きな不祥事に発展される可能性があるという。
なお、TSMCの3nmプロセスは、AppleやIntelのほか、複数顧客がすでに注文を入れており、QualcommもTSMCに生産委託先を乗り換えたと言われるなど、多くの顧客がその立ち上がりに注目している。また、Samsungの3nm GAAプロセスの立ち上がりについても、2nmプロセスからGAA構造の導入を予定しているTSMCやIntelにとっては気がかりとなっている模様である。