日本電信電話(NTT)は2月25日、端末主導型の動的サイトダイバーシティ制御技術により、60ギガヘルツ帯無線LAN(WiGig)において高速移動環境下での無瞬断大容量無線伝送に成功したことを発表した。
この技術によって、WiGigなどのソフトハンドオーバー機能を持たない非移動体無線通信においても、高速移動体に対して無瞬断の大容量無線伝送が可能となる。ソフトハンドオーバー機能とは、端末局が同時に複数の基地局と接続し無瞬断で基地局を切り替える機能。同技術は、ドローンや車などのリアルタイム映像伝送や録画データの一括伝送などへの活用が期待される。
同社はこれまで、WiGigの通信電波を用いた無線端末の自律測位に基づいて適切な切り替えタイミングと切り替え先の基地局を制御する手法(基地局切り替え制御)を考案し、上りスループット1ギガビット毎秒のまま500ミリ秒以内に基地局の切り替えができることを実証している。しかし、基地局切り替え時の基地局探索動作と初期接続動作に伴って500ミリ秒の通信断が発生するため、再送遅延やパケット損失が必要となり、リアルタイムを要する映像データや常時高スループットを要するデータ一括転送などへの適用が課題だったという。
そこで今回、同社は無線端末内に複数の無線機能部を装備する端末主導の動的サイトダイバーシティ制御技術を考案した。移動体内のアプリケーションは制御機能部を介して複数の無線機能部と接続するとのことだ。各無線機能部がそれぞれ無線基地局と接続することで基地局切り替え制御を行う。
同技術では各無線機能部が互いに異なる基地局へ接続するよう制御するため、各無線機能部の基地局切り替えタイミングをずらし、両無線機能部が同時に基地局を切り替えることを回避している。一方の無線機能部が基地局を切り替えている間に、もう一方の無線機能部で無線伝送を行い通信断を回避するという。
これにより、ソフトハンドオーバ機能のない非移動体無線通信でも、高速移動環境下において無瞬断で大容量無線伝送を行えることを確認したとのことだ。
なお、同技術については2021年12月に鈴鹿サーキットで開催された「全日本スーパーフォーミュラ選手権の合同テスト・ルーキーテスト」において実証実験が行われた。制御端末からデータを転送し、各WiGig基地局が受信するレイヤ2での上りスループットを測定することによって性能評価を行ったところ、同技術では無線伝送できていない時間帯が無く、複数基地局間を無瞬断で無線伝送できることを確認できたという。