NECは2月18日、サントリービールにAIを活用した設備の異常予兆検知システム「NEC Advanced Analytics - インバリアント分析」を提供することを発表した。同システムは、サントリー〈天然水のビール工場〉京都に4月から新設される缶充填ラインに導入され、5月下旬から稼働開始を予定する。

サントリービールでは従来、大量生産を行う製造現場の生産ラインにおいて、現場担当者が設備のセンサーデータを活用し、しきい値による監視を行っていた。中でも缶充填ラインは故障が生産停止に直結しかねない重要な設備であり、わずかなデータの変化を検知した時点で対応する必要がある。だが、しきい値超過が発生した際にどこを見るべきか、超過箇所以外が主原因の可能性はないかといった判断は、個人の経験やノウハウに頼る部分が多く、そのスキル継承が課題となっていた。

そこで、サントリーグループのITテクノロジーを担うサントリーシステムテクノロジーは、NECと協働で、AIを活用したシステムを導入するプロジェクトを開始。NECが提供する先端AI技術群「NEC the WISE」の一つである「インバリアント分析技術」を用いた「NEC Advanced Analytics – インバリアント分析」を中心としたシステムの構築に至った。

インバリアント分析とは、大量に収集したセンサーデータの中からシステムの特徴を示す普遍的な関係性(インバリアント)を、自動的かつ網羅的に抽出し、モデル化した上で、モデルと一致しない挙動をサイレント障害として検知する技術。これを活用したNEC Advanced Analytics – インバリアント分析では、PLC(Programmable Logic Controller)などの制御システムを通じて設備に設置されている多数のセンサーから大量の時系列データを収集・分析。インバリアントをモデル化するとともに、そこから予測されるデータの変化と実際のデータを比較し、“いつもとは異なる”状態を予兆段階で検知する。

  • システム概要図

モデル化は、現場担当者が相関関係を見たいセンサー情報とそれらのセンサーが通常稼働していた時間をシステムに入力するのみで行えるという。また、今回導入するAI技術は判断根拠が明確なホワイトボックス型AIであることから、保全現場でのアクションに必要な情報も提供できるとしている。

さらに、新たな試みとして、缶充填ラインにおいて、音による早期の異常検知が可能かどうかの検証も実施する。これは、充填機のある室内にマイクを設置し、通常とは違う音の特徴を見ることにより、異常検知が行えるかどうかを検証するというもの。この異常検知が実現されることより、属人的な保全業務からの脱却や作業負担の軽減などが期待できるという。

  • 工場内の充填機

NECでは同システムの提供を通じ、サントリービールにおけるノウハウや経験の継承、設備の安全稼働の支援を行い、生産ラインのDX推進に貢献していくとしている。