東京大学(東大)は、健康食品を不健康な行動をとるための免罪符として描く「免罪符型広告」が、視聴者におよぼす影響を調査した結果、そうした健康食品の動画広告を閲覧することで、視聴者の「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という認識が強まることが実証されたと発表した。
同成果は、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻 専門職学位課程2年の家れい奈氏、同大 大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野の奥原剛 准教授、同 木内貴弘 教授らによるもの。詳細は、MDPI(Multidisciplinary Digital Publishing Institute)の雑誌「Healthcare」に掲載された。
健康食品は、乱れた食事や運動不足を解消するものではなく、これまでの公衆衛生に関する複数の研究からも、健康食品の有効性は限定的であることが指摘されている。一方、民間の調査からは、特に「脂肪」への効果を訴求する健康食品への関心が高いことが分かっており、研究チームでは今回、そうした日本における「脂肪」への効果を訴求する健康食品の動画広告に、「どのような」内容が「どれくらい」あるのかを類型化する内容分析を実施。その結果、健康食品を、脂質の多い食品を摂取するための「免罪符」かのように描いた「免罪符型」と名付けられる広告が、分析対象の広告の約25%を占めもっとも多いことが判明。「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という誤った認識を視聴者にもたらす可能性があることを受け、「脂肪」への効果を訴求する健康食品の「免罪符型」動画広告が、視聴者の認識に与える影響を評価することを目的としてランダム化比較研究を実施したという。
具体的には、調査会社の登録モニター788名を対象に、インターネット調査の形で、介入群394名、対照群394名にランダムに割り付け、介入群に「免罪符型」と特定した動画広告のうち、再生回数が多い3本の動画を閲覧してもらう一報、対照群には、健康食品とは無関係のお茶の抽出方法に関する動画を閲覧してもらい、「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という認識に関する質問9問について、「非常にそう思う」から「全くそう思わない」までの6段階で動画の閲覧前後に尋ね、平均値を算出。動画を閲覧した後の認識の平均値を介入群と対照群で比較を行ったという。
その結果、「免罪符型」の動画を閲覧した介入群は、お茶の動画を閲覧した対照群と比較して、統計学的有意に強く「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」と認識していることが判明し、誤った認識を高めていることが示されたという。
健康食品を、不健康な行動をとるための免罪符かのように描く「免罪符型」の動画広告は、特定の文言で「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」と訴求しているわけではないが、動画広告内のストーリーや登場人物の表情などを通じ、「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という誤った認識を高めることが示された今回の結果について研究チームでは、「免罪符型」の広告が、もし、日常的に不健康行動も誘発しているとなれば、不健康行動による害の方が大きいだろうと指摘し、健康食品の動画広告の内容を改善する重要性が示唆されたとしている。