西日本電信電話岐阜支店(以下、NTT西日本)は2月24日、エヌ・ティ・ティピー・シーコミュニケーションズ、構造計画研究所と共に実施した、AI(Artificial Intelligence:人工知能)および数理工学技術を活用したクラウドによる河川情報発信サービスの実証実験の結果を公表した。

同実証は2020年8月から2021年2月までを第1期、2021年8月から2021年12月までを第2期として、岐阜県下の2カ所を含む全国5エリア計10カ所の中小河川と水路において実施したものだ。

今回の実証実験では「電柱に設置した河川カメラの有効性の検証」「AIを活用した河川カメラの画像解析による河川水位の計測」「数理工学技術を活用した中小河川水位の予測」の3つの取り組みを実施している。

「電柱に設置した河川カメラの有効性の検証」においては、第1期は河川近隣の電柱を活用して岐阜県下の河川4カ所にカメラを設置し、一定期間屋外に設置する際の耐久性と、電柱を活用することによるコストを検証するとともに、河川と一定距離がある地点で撮影した画像データからの情報取得の可否など、電柱に設置した河川カメラの有効性を総合的に検証した。

  • 岐阜県の電柱に設置した河川カメラのイメージ

また、第2期では、全国5エリア(岐阜、千葉、大阪、岡山、長崎)の河川にある既設のカメラ10台から遠近異なる多様な画像データを取得し、全国の異なる環境および異なる画角で撮影された画像データを活用した場合におけるサービスの有効性、誤差要因やカメラ設置条件などを検証している。

検証の結果、いずれの場合も、利用したカメラから画像解析に必要な要件を満たした画像データを取得できることが確認できたとのことだ。

  • 全国に設置した既設のカメラ映像

「AIを活用した河川カメラの画像解析による河川水位の計測」では、第1期はカメラ映像にバーチャル水位計の情報を付加し、実際の水位計を使うことなくカメラ映像とAIによる画像解析技術を使用して水位計測を実施した。

  • バーチャル水位計の情報付加イメージ

さらに、第2期では計測した水位をカメラの河川映像上へリアルタイムで表示するとともに、基準値を超えた場合にはメール通知を行うシステムを構築して動作検証を実施したという。

その結果、いずれの場合もAIによる河川水位の計測が可能であることを確認できたとのことだ。水位の計測制度はカメラの性能や天候の影響を受けるものの、現在の運用と併せて活用することで、職員の安全確保や稼働削減の効果が期待できるとのことだ。

  • AIと画像解析技術を使用した水位計測のイメージ

「数理工学技術を活用した中小河川水位の予測」では第1期および第2期を通じて過去の水位や雨量データを数理工学技術で解析し、15時間先の水位予測を実施した。さらに、異なる河川における予測も行い、実際の水位と照合して水位予測の精度検証にも取り組んでいる。特に第2期では、過去の水位データがない河川で水位予測を行っている。

検証の結果、第1期および第2期を通じて、過去の水位や雨量データを用いた場合に加え、過去の水位情報がない場合においても水位予測が可能であることが確認できた。仮に予測開始時には予測の精度が低い場合でも、運用期間が長くなるにつれてデータが蓄積されることで精度の向上が期待できるという。

  • 水位・雨量グラフ 予報雨量の誤差を考慮し、水位予測結果を確率表示している

  • 超過確率表 基準水位に対して、1時間から15時間先までの超過確率を算出している