ビザ・ワールドワイド・ジャパン(以下、Visa)は2月22日、新しい生活様式の中でVisaデビット(以下、デビット)が貢献するDX(デジタルトランスフォーメーション)についての説明会を開催した。
近年は新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、消費支出は減少傾向にある。一方でEコマースは急速に拡大しており、日本のキャッシュレス決済比率は増加しているという。そこでVisaは、シンプルで安全かつスピーディな支払い体験の提供を目指して、便利な決済体験の構築、安心安全な決済の普及、脱現金およびデジタル決済の推進などに取り組んでいる。
さて、デビットとは国内外のVisa加盟店であれば決済時に支払い金額が銀行口座から即時に引き落とされる決済方式だ。デビット利用者のうち、51.9%が決済時にすぐに銀行口座から引き落としになる点に魅力を感じており、53.8%がインターネットショッピングでも利用できる点に魅力を感じているという。
世界のデビットの動向を見ると、2019年はVisa取扱高のうちVisaクレジットが55%を占めデビットは45%だったが、2021年にはデビットの取引高が52%まで割合を伸ばしている。また、日本では37行がデビットを発行しており、その発行枚数は1770万枚に上るとのことだ。さらに、国内におけるVisa取扱高は急成長の傾向にあり、直近10年間で20倍にまで増加している。
2017年のイギリスにおいては、デビットの取引件数が現金での取引件数を上回っている。2012年のロンドン五輪がその契機の一つになったと同社は見ており、東京2020大会を経験した日本でも同様に、今後キャッシュレス決済の取引件数が伸びていくだろうとの考えを示している。
DXの観点から銀行を取り巻く環境に対しデビットが提供する価値について、同社のコンシューマーソリューションズ部長である寺尾林人氏は「銀行口座の脱現金化とデジタイゼーション」と説明した。
低金利環境の長期継続や民間企業の資金余剰といった環境の中で、銀行は新型コロナウイルスによる顧客とのタッチポイントの減少や顧客ニーズの多様化に直面していることから、デジタルツールを活用した競争力の強化が求められている。
「顧客との重要なタッチポイントである銀行口座をデジタル化し、脱現金化やデータ化を推進することが、銀行にとっての一丁目一番地ではないかと考えている。そのためにもデビットへの取り組みが重要であるはず」(寺尾氏)
具体的な第一段階として、デビットカードを利用することでATMや支店運営費などのコスト削減が見込める。さらには、月に数回使う程度のキャッシュカードが毎日の支払いで利用可能なデビットカードに置き換わることで、口座を決済基盤に変換するとともに顧客接点の増加やデジタル化を推進できる。
これにより顧客の行動が可視化できれば、より良いサービスの開発やデジタルデータを活用したOne-to-Oneマーケティングも期待できるとのことだ。
デビットの利用は消費者の行動にも影響があるようだ。銀行のATMを使う頻度が高いとする回答は、デビット利用者および非利用者を合わせた全体平均よりも、デビット利用者の方が低い。ATMを使用せずに直接カードで買い物を済ませられるためだ。一方で、インターネットバンキングアプリの利用頻度は全体平均よりも高い。
さらに興味深いのは、デビットをメインに利用している人はクレジットカードや現金をメインに利用している人よりも、毎月一定割合の金額を貯蓄している人の割合が高い点だ。生活者にとってもデビット決済は収支の可視化がしやすく、貯蓄行動を促しているのだという。
「従来は銀行口座とキャッシュカードをひもづけ、ATMで現金を引き出して使用する場面が当たり前だった。しかし、デビットを利用して決済をデジタル化できれば、日本全体の社会的なメリットになるはず。デビットで銀行口座へデジタルにアクセス可能にして、お金の管理におけるストレスを軽減できる世界を目指したい」(寺尾氏)