日本電信電話(NTT)は2月22日、UHDTV(Ultra-high Definition Television:超高精細度テレビジョン)規格における最高の解像度とフレーム周波数を有する8K120p映像を、光パスを通してSMPTE ST 2110規格で送受信可能な非圧縮映像伝送技術を開発したことを発表した。
8K120p映像とは横方向7680画素、縦方向4320画素、フレーム周波数120ヘルツからなる映像だ。映像を送る際に1枚のフレームを奇数偶数ラインに分けることなく全ての画素を送る方式をプログレッシブと呼び、8Kかつ120ヘルツでプログレッシブの映像フォーマットを8K120pと記述する。
SMPTE ST 2110規格はSMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)が定める放送番組素材伝送用の映像伝送規格を指す。映像、音声、補助データを別のストリームで伝送する特徴を持つ。
映像伝送においては非圧縮伝送が画質と遅延の面で理想とされるが、8K120p映像信号のデータレートは80ギガビット毎秒超であり、高信頼化のために映像ストリームを冗長伝送する場合には160ギガビット毎秒超のデータレートが発生するため、既存のIP網サービスを利用した長距離の伝送は困難とされていた。
しかし今回開発した技術では、SDI(Serial Digital Interface)信号を光伝送装置に直収し、大容量の光パスに非圧縮のSMPTE ST 2110ストリームとしてダイレクトに送出することによって、映像伝送の長距離化と低遅延化を実現している。
さらに、映像データを複数のストリームに分割して伝送する方式であるSMPTE RP 2110-23を利用して8K120pの映像データをSDI信号からSMPTE ST 2110ストリームへダイレクトにマッピングすることによって、送信側での映像入力から受信側での映像出力までの遅延を1ミリ秒以内に抑えたとのことだ。
同社は近未来のスマートな世界を支えるコミュニケーション基盤としてIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を打ち出し、研究開発を進めている。同構想を支える3つの主要技術分野の一つとしてAPN(All Photonics Network)を掲げており、光ベースの技術を用いることで従来とは別格の通信パフォーマンス実現を目指すという。
今回同社が開発した技術とIOWN APNにより、エンド・ツー・エンドの光パスを通して大容量映像を超低遅延で送受信可能になると期待される。同社は距離を意識させない映像コミュニケーションが実現できるとしてており、リモートプロダクションや遠隔医療、遠隔監視といった幅広いユースケースへの適用を見込めるとのことだ。