中Smart Logicが1億ドルを資金調達
中国の半導体設計ベンチャーであるSmart Logic(思朗科技)が、投資ラウンドシリーズCにおいてTFTR Investment(天風天睿)やCICC Capital(中金資本)傘下のファンドなどから1億ドルを調達したと複数の中国メディアが報じている。
Smart Logicは2016年、中国科学院傘下の国立研究所から独立する形で設立され、高密度コンピューティング(HDC)、5G通信ベースバンドおよびマルチメディア画像処理の3分野に対応するチップ開発とその応用に特化したスタートアップである。
同社は、2021年9月に中国で最初の5G小型基地局チップをリリースしたことで知られる。中国では2021年末までに142万5000の5G基地局が建設・開設され、2022年には65万を超える5G基地局が建設される予定となっており、その数は世界の60%以上を占めると言われている。
現在、5G小型基地局向けコアプロセッサチップは主にIntelやQualcommなどの海外メーカーから提供されている。中国のICTデジタルソリューションプロバイダーであるH3Cは、5Gスモールセル屋内配電システムのパートナーとしてIntelを選択しており、Intelは主にXeonプロセッサとFPGAチップを提供している。そこで、Smart Logicは、ASICの効率、FPGAの再構成可能性、およびCPUの柔軟性を組み合わせてコンピューティングパワーの向上と消費電力の最適化した独自チップを開発した。最初の中国向け5G小型基地局チップは、主にベースバンドコアプロセッサ用であり、多機能ユニットの並列デジタル信号プロセッサを搭載した独自開発品であり、海外のIP認証の制約も回避しており、海外製チップの置き換えを狙っているという。
中国では中央政府国務院直属の中国科学院傘下のいくつもの国立研究所が推し進めている一連の創業支援計画の支援を受けて、多くの若い研究者たちが起業家へと転身し、研究所の研究成果を実用化する一方で、中国のAI新興市場における中核的存在になっている。Smart Logicの創業者も中国科学院自動化研究所の出身者である。
自動運転用チップ設計のBlack Sesameも資金調達
自動運転用ICチップサプライヤのBlack Sesami Technologies(黒芝麻智能科技)は2021年、シャオミ傘下の「小米長江産業基金(Xiaomi Yangtze River Industry Fund)」が主導する戦略的ラウンドのシリーズCで数百億円規模の資金を調達したが、2022年に入って、新たにBosch傘下の中国市場向け投資プラットフォーム博原資本(Boyuan Capital)からの戦略的資金調達にも成功したという。両社は自動運転に関する包括的なパートナーシップを強化し、自動運転ソリューションの共同開発と、自動運転技術の商用化の加速を目指すとしている。
Black Sesamiは低消費電力の車載用ニューラルネットワークアクセラレータ「DynamAI NN」と車載用画像処理プロセッサ「NeuralIQ ISP」をベースに、演算能力の高い自動運転向けチップを独自に開発している。
ディスプレイドライバーIC設計のChiponeも量産に向けた資金調達を実施
ディスプレイドライバーIC設計会社である中Chipone Technology(Beijing)(集創北方)も2021年秋、1000億円以上のシリーズE(量産向け大型投資)の資金調達を完了した。
液晶デイスプレイ、および新しいタイプのディスプレイドライバーを製造しているが一気に業務拡大を目指している。Omdiaの調べでは、同社の世界市場におけるLCDスマートフォンディスプレイ用ドライバーのシェア(2021年第3四半期)は11%、大型テレビ用ドライバーは5%である。
同社が製造委託しているファウンドリは、大型ディスプレイ用ドライバーが台Vanguard、Powerchip、中Nexchip、スマートフォン用ドライバーがNexchip、SMIC、そして新規参入の有機EL(OLED)用ドライバーはSMICおよびGlobalFoundriesだという。
なお中国は、起業家精神が旺盛で、数えきれないぐらいほどの半導体設計ベンチャーがひしめいており、中国のみならず海外投資家から支援を受けて急成長を遂げるスタートアップも少なくない。中国政府は、その中から、自然淘汰やM&Aで、HiSiliconやUNISOCのような世界で勝負できるファブレスが出現することに期待をかけている。