以前、「木材の良さ」について科学的な観点から、その「良さ」を記事にした。

その記事の最後に木材は他材料より扱いにくい点もあると書いたので、今回はその話題について紹介したいと思う。

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人類は古来より木材を使っていた。それは木材が身近にあり加工性に優れた材料であったことが大きい。しかし、コンクリートや鉄骨といった人類が扱いやすいように生み出された材料が登場したことで、木材の扱いにくさを嘆く声が時々聞こえてくる。

というより人間のわがままに拍車がかかったというべきかもしれない。そもそも樹木は人類に扱いやすくなるように進化したのではないのだから。

異方性・寸法変化

木材は生物材料で直交異方性体であるため、外力方向と木材の繊維方向の関係によって得られる強度性能は大きく異なる。つまり、方向を考えるという手間が増えるだけでなく、構造計算が複雑化する。

  • 木材強度の異方法

    木材強度の異方性(出典:日本住宅・木材技術センター)

また、木材の良さである調湿性、すなわち吸放湿性に伴って寸法が変化したり、粘弾性体であるため荷重継続下で変形が進行したりと、工学的な処理が困難である性質をもつ。

  • 木材の含水率と収縮率の関係

    木材の含水率と収縮率の関係(出典:マルホン)

これらの性質は、フローリングの隙間が大きくなりホコリが詰まる、板が割れる、新築木造住宅では「ピキッ」と木の割れる音がするといった形で私達にふりかかる。

このような木材の欠点を補う目的でさまざまな木質接着製品が開発されている。

例えば、CLT(Cross Laminated Timber)や合板、MPP(Mass Plywood Panel)などは挽き板や桂剥きにした単板を繊維直交方向に積層させた等方性材料が存在する。

しかし、さまざまな木質接着製品を持ってしても上述した木材の物理特性を完全にはクリアできない。

木材乾燥

木材は基本乾燥させて用いる。建築物や家具など私達が目にするほぼすべての木材が乾燥過程を経ているといってもいいだろう。

木材乾燥は木材を扱う上では非常に重要な工程であり木材製品の品質に直結する。そんな木材の乾燥方法は大きく天然乾燥と人工乾燥の2種類に分けられる。

天然乾燥は屋外や半屋外で自然の状態で乾燥させ、人工乾燥は乾燥機内で強制乾燥する方法だ。どちらが材として優れた乾燥方法なのかは諸説あるためここでは控えておくが、割合でいうと人工乾燥が圧倒的に多い。

しかし、人工乾燥の乾燥温度やスケジュールを間違えると、目的とする含水率にならなかったり乾燥中に木材が割れたり、色味が変化するなどの悪影響がでる。したがって乾燥技術の高度化や割れや品質向上を目的として、木材乾燥に関連する研究はこれまで多くなされており、推奨される乾燥スケジュールも公開されている。

  • 推奨乾燥スケジュール

    推奨乾燥スケジュール(出典:富山県農林水産総合技術センター木材研究所)

ただ、推奨乾燥スケジュールがあるものの、実際の現場は経験則に頼ったスケジュールで行う現場も存在する。

つまり長年の勘や経験で木材乾燥をするということだ。試行錯誤の末、得た知見であるため信憑性は高いものの、科学的にみて合理的かどうかは不明だ。

このように乾燥1つとっても樹種や製品などによってさまざまで、とても扱いが簡単な材料とは呼べないであろう。

いかがだっただろうか。

少し前からDIYが流行し、木材や木質材料に触れる機会も多くなった人も多いのではないのだろうか。

材料を使うには良い側面と悪い側面をしっかり知っておく必要がある。そのため、以前の木材の良さを紹介した記事と併せて参考にしていただけると幸いである。