スマートフォンやSNSの普及により、消費者行動およびマーケティング手法が大きく変わりつつある今、小売に求められる価値とは何だろうか。消費者は何を求めて実店舗に足を運ぶのか——米国発のRaaS(Retail as a Service)企業であるb8ta(ベータ)は、「Retail designed for discovery.(リテールを通じて人々に"新たな発見"をもたらす。)」をミッションに掲げ、こうした問いに“売らない店舗”というビジネスモデルで挑む。
2月10日に開催されたリテールガイド×TECH+共催セミナー「リテールDXソリューションカンファレンス2022」では、ベータ・ジャパンのCOO 羽田大樹氏が、b8taのビジネスモデルやデータ活用の方法、同社が考えるDXのポイントについて解説した。
“売らない店舗”の意義とは
2015年に米国サンフランシスコで誕生したb8taは、米国のほか、ドバイ、サウジアラビア、日本で店舗を展開する。従来の小売では、店舗あたりの利益を最大化することが重視されており、出店戦略もそうした考えを基に決められるが、b8taの特徴は「売ることを主目的としない」ことである。消費者に対しては、「発見と体験」を重視したリアルの場を無償で提供。一方で出品企業には、店舗で取得した消費者データによる価値や発見をRaaSモデルとして月額制で提供している。
「消費者は、新しい商品との出会いや実体験を求めて来店します。オンラインでは自分が知らないものに出会いづらく、出会えたとしても、高価なものや身に着けるもの、部屋に置くものなどは、実物を確かめてから買いたいというニーズがあります。b8taでは、革新的な商品を集めて体験の場を提供し、セレンディピティを生み出しているのです。
一方、ブランドや企業としても、体験の場を持ちたいと考えてはいても、実店舗や店舗スタッフを抱えるのにはコストが掛かってしまいます。また、オンライン上のみのビジネスでは、データは取れても、顧客の生の声を聞く機会が少ないため、結果を裏付ける示唆に繋がる情報まではなかなか得られません。そこでブランドや企業に対してはオフラインの場所を提供し、在庫・管理・接客までをb8taが代行するほか、顧客の声や行動データも共有しています」(羽田氏)
b8taは、消費者とブランドや企業のあいだに入るプラットフォームとして、双方の課題を解決しているということになる。