コロナ禍で多くの企業がテレワークを導入し、約2年が経過した。今でもテレワークを続けている企業もあれば、すでに完全出社スタイルに戻した企業もあるだろう。テレワークを導入したけれど、うまくいかなかったという企業から多く聞かれるのが、「従業員のエンゲージメントが下がった」「組織の一体感が失われてしまう」といった声だ。

こうした課題が生まれた原因は、そもそもテレワークにより組織の状況が見えにくくなったことにある。つまり、従業員エンゲージメントを高めるには、まず現在の組織状況や従業員の状態を可視化する必要があるのだ。

では、それにはどうすればよいのか。12月2日に開催されたTECH+スペシャルセミナー「バックオフィス業務のデジタル適応法〜バックオフィスからDXの礎をつくる〜」に、ヤプリ 総務部 マネージャーの佐藤浩太郎氏が登壇。「リモートで見づらくなった人・組織のリアルをDXツールで可視化」と題し、組織状況を可視化する方法について語った。

コロナ禍以前のコミュニケーション活性化施策

コロナ禍以前から、佐藤氏が組織づくりで意識してきたのが「ミッション・バリューの浸透」「チームドリブン」「オンボーディング」の3点だ。特に、ここ数年で社員数が急増した同社では、いかに短期間でオンボーディングを成功させるかが課題になっていたという。そこで佐藤氏は、社員間のコミュニケーションを活性化するための施策をいくつも実行してきた。

  • ヤプリ 総務部 マネージャーの佐藤浩太郎氏

その一つが、「シャッフルランチ」だ。“いつものメンバー”ではなく、あえて総務がメンバーを振り分けてランチをとってもらうことで、普段はよく知らないメンバーとも親交を深めてもらう狙いがある。ポイントは、メンバーを完全にランダムでは選ばないこと。例えば、各部署から1人ずつ選んだり、男女比のバランスを考えたり、入社して日が浅い人はメンターと一緒にしたりなど、細かい点にまで配慮してメンバーを選ぶことが大切だという。

「シャッフルランチでは、いろいろな人とのコネクションを作ることができます。何かあったときに、『シャッフルランチで一緒になったあの人に聞こう』といった行動にもつながります」(佐藤氏)

次に佐藤氏が紹介したのが「バリューカード」だ。これは、同社が掲げる4つのバリュー「再構築」「カスタマーサクセス」「感動体験」「チームドリブン」を従業員に浸透させるための施策である。

各カードには「to」と「from」という項目があり、バリューを体現した行動をしている人を見つけたら、メッセージを書き込んでその人に渡す。カードを書くには日頃からバリューを意識している必要があるし、カードをもらった人も「自分のこの行動がバリューを体現できていたんだな」という気付きを得られるわけだ。また、もらったバリューカードは社内カフェに持っていくことでドリンクと交換できる。直接的なメリットがあることで、利用が促進される仕組みになっている。

この他にも、部活や社内イベントなどを積極的に開催しており、社内コミュニケーションに役立っているという。

――ここまでが、コロナ禍以前の話である。