岡山大学は2月17日、睡眠中の歯ぎしりによって咬耗(こうもう:歯のすり減り)が生じることは一般的に広く知られており、マウスピースを使用すれば進行を抑制することが可能だが、咬耗の進行には日中の噛みしめも大きく関係している可能性があることが明らかになったと発表した。

同成果は、岡山大学病院 歯科(補綴歯科部門)の北川佳祐医員(大学院生)、同・兒玉直紀講師、 岡山大学術研究院 医歯薬学域(歯)咬合・有床義歯補綴学分野の皆木省吾教授らの研究チームによるもの。詳細は、歯科研究を扱う日本補綴学会の刊行する欧文公式学術誌「Journal of Prosthodontic Research」に掲載された。

歯は人体の中でも硬い部位であるが、歯ぎしりなどで噛みしめる時間が長くなると、歯の咬耗につながるほか、噛みしめは歯周病を進行させたり、噛み合わせの崩壊や顎関節症などにつながったりする場合もあり、睡眠中の歯ぎしりに対しては、マウスピースの使用が推奨されているが、近年、起床後も噛みしめが生じることが分かってきたという。そこで研究チームは今回、独自に開発した携帯型小型装置を用いて日常生活における日中と睡眠中の噛みしめについての調査を行ったという。

調査は、咬耗が軽度のグループと中等度以上のグループの2グループ(各16人)に対して実施。その結果、咬耗が中等度以上のグループ方が軽度のグループと比較して日中で約4.4倍、睡眠中に約1.5倍噛みしめている時間が長いことが確認されたほか、日中では歯をコツコツと叩くような弱い力の噛みしめを多く行っている可能性があることもわかったという。研究チームでは、歯がすり減っている人ほど、歯と歯を長時間接触させる傾向があることが考えられるとしている。

また研究チームでは、日中の噛みしめは多くの人が自覚しておらず、無意識のうちに行っているとしており、このことが広く認知されれば将来的に歯がすり減ってしまうリスクを軽減できる可能性があるとしている。さらに、今回の研究で算出されたデータを基に将来的に咬耗が生じるリスクが高い個人を特定するだけでなく、早期介入により咬耗の重症化を未然に予防することが期待されるともしている。

なお、論文主著者である北川医員は今回の研究成果に対し、「睡眠中の歯ぎしりが世間ではよく知られている中で、日中の無意識の噛みしめの存在はいまだにあまり知られていません。コロナ禍でストレスが増えると噛みしめが増える可能性も懸念されるので、より多くの人に日中の噛みしめのリスクを認識してもらえたら良いなと思います」とコメントしている。