半導体市場動向調査会社である台湾TrendForceによると、ウクライナとロシアの紛争が起これば、半導体製造コストが上昇し、半導体価格にそれが転嫁される可能性があるという。

これは、ウクライナが、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの半導体の原材料ガスの主要産出国であり、中でも世界のネオンガスの約70%を供給しているとも言われているため。ウクライナとロシアの間で本格的な紛争が生じれば、ウクライナの原材料ガス供給に影響を与える可能性があるとする。ただし、半導体工場および原材料ガスの供給業者は一定の在庫を確保しているほか、ほかの地域からの供給を受けることも可能であることから、ウクライナからの原材料ガスの供給が中断されたとしても、短期的には半導体の生産ラインが停止することはないと考えられるとしている一方、供給量が減ることになるため、価格の上昇につながることが懸念され、それがウェハの製造コストを押し上げる可能性があるとしている。

特にDUV露光用エキシマレーザーに必要な不活性ガス混合物にネオンガスは含まれており、代替は困難である。ネオンガスを必要とする半導体リソグラフィプロセスは、主に200mmウェハにおける180nmプロセスから300mmウェハにおける1Xnmプロセスまで幅広く使われている。

TrendForceによると、グローバルにおけるファウンドリの生産能力のうち、180〜1Xnmプロセスが占める割合は約75%ほどで、高度なEUV露光プロセスを採用しているTSMCとSamsungを除いて、ほとんどのファブでは、180〜1Xnmプロセスからの売り上げの割合が90%を超えているという。また、2020年以降、供給不足となっているPMICやWi-Fi、RFIC、MCUなどといった半導体カテゴリの製造プロセスのほとんどが、この180〜1Xnmプロセスを用いている。さらに、メモリに関しても、DRAMの場合、各社ともにEUVを用いた最先端プロセスへと徐々に切り替えを進めているものの、総生産能力の90%以上は依然としてDUV露光が用いられているほか、NANDにいたってはすべてのプロセスがDUV露光で行われているという。