アマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)は2月18日、行政、スマートシティ、シビックテック、ヘルスケア、サステナビリティ、宇宙などの公共分野において、課題解決に取り組むスタートアップを支援する新プログラム「AWS Startup Ramp」を日本で開始することを発表した。
同プログラムは、技術支援・トレーニング、コミュニティ、コネクション・Go-To-Market 支援、最大10万USDのAWS無料利用のクレジットを提供することで、スタートアップの事業成長を支援し、公共分野のイノベーションを加速させることを目的としたもの。公共分野において事業展開する、創業10年以内、年間売上高1,000万USD以下のスタートアップを対象としている。
メンバー拡大とコミュニティ形成においては、コード・フォー・ジャパン、アーバン・イノベーション・ジャパン、イノベーション道場と連携して行う。
アマゾンウェブサービスジャパン 執行役員パブリックセクター統括本部長 宇佐見潮氏は、「われわれはスタートアップと連携して公共サービスのデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた取り組みを加速させているが、公共DXとは、国民一人ひとりがデジタルの恩恵を享受できる社会を実現することであり、その成功のカギはテクノロジーとデータの民主化と考えている」と説明した。
宇佐美氏は公共DXには、「社会環境の変化に柔軟に対応すること」「多様なニーズに応えるデザイン」「最新技術を活用したイノベーション」が求められるが、これらの担い手として、「社会イノベーションにコミットし、失敗を恐れず、革新的な事業に挑戦するスタートアップの特性にマッチしている。それゆえ、われわれはスタートアップに注目している」と語った。
しかし、スタートアップの公共分野の進出には課題があり、その課題解決を支援し、スタートアップの公共分野への進出を加速させるため、「AWS Startup Ramp」を開始したという。
説明会には、AWS Startup Rampの初期メンバーとして参加しているGrafferのCEO である石井大地氏が参加した。Grafferは、来朝せずにスマートフォンのみで手続きが行える申請サービス「Graffer スマート申請」をはじめ、行政のデジタル化に必要なサービスを提供している。
今年1月にリリースした「お悩みハンドブック 全国版」は、スマートフォンやWebサイトから質問に答えていくだけで、228の公的支援な支援制度から、適切な公的な支援を調べることができるサービスだが、既に利用者は10万人を突破しており、石井氏は「うれしく思っている」と語った。Twitterで注目されたことで利用が急増したが、クラウドサービスであるAWSを活用していたためサービスがダウンすることはなかったという。
行政のデジタル化に貢献している同社だが、石井氏は公共サービスの開発ならではの苦労が3つあったと述べた。1つ目は「各種制度や規制などへの対応」で、石井氏は「最大の課題」と語っていた。公共サービスは、行政専用の閉域ネットワーク「LGWAN」での提供が必須となるため、ネットワークの設計が難しいそうだ。
2つ目の課題は、課題の把握に協力してもらえる官公庁・自治体へのパスを見つけることが難しいことであり、3つ目の課題は公共サービスのプロダクトマネジメントの難易度が高いことだ。
石井氏はこうした課題の解決支援を「AWS Startup Ramp」に期待していると述べた。「AWS Startup Rampによって、スタートアップが知見を持ち寄って提言できる機会を持てるようになること、課題を抱える自治体と課題を探しているスタートアップのマッチングを創出すること、公共領域におけるクラウド活用のベストプラクティスを編み出し、結果として国民に還元できるようになることを期待している」
今後、3月18日にスタートアップを対象とした「AWS Startup Ramp」を説明するウェビナーが開催され、5月中旬にはプログラム開始が予定されている。