メルカリは2月17日、教育関係者などに向け金融教育ポータルサイトを公開し、6種類の教育プログラムを無償で提供すると発表した。子どもたちにモノやお金の価値について学ぶ機会を提供することで、限りある資源が大切に使われる「循環型社会」の実現につなげることを狙っている。

  • メルカリは教育関係者などに向け金融教育ポータルサイトを公開する

具体的な実例を交えた教育プログラムを提供

ポータルサイトの名称は「mercari education」。モノやお金の価値について、具体的な実例を交えた学びが得られる教育プログラムとして、次の6種類を提供する。各プログラムは対象年齢・科目を目安としてダウンロードし、授業などで活用することが可能。また、時間配分や学習内容、指導上の留意点をまとめた指導案も同時に公開されている。

  1. フリマアプリとリユースについて学ぼう
  2. モノやお金の価値を学ぶワークショップ教材「メルカリかんさつ帳」
  3. フリマアプリを安心安全に利用するために
  4. メルペイと考える安心安全なキャッシュレス社会
  5. キャッシュフローから考える消費者信用と家計管理
  6. フリマアプリでSDGsを学ぶ

例えば、「メルペイと考える安心安全なキャッシュレス社会」というプログラムでは、スマホ決済アプリを題材に前払い・即時払い・後払いの特徴やセキュリティを守る方法が学べる。ワークショップでは、利用場面がストーリー仕立てで書かれたプリントを用いて、支払い方法ごとの注意点やセキュリティに関して重要なポイントを個人またはグループで考え、どのようなことに気を付けてスマホ決済を利用していくべきかを学習する。

  • 教材例「メルペイと考える安心安全なキャッシュレス社会」

同日開催された記者会見に登壇した メルペイ 金融教育担当の斎藤良和氏は「近年の急速なデジタル化、それに伴う社会状況の変化などを公的な教材に反映しようと思うと、時間のラグが生じてしまうため、民間企業による学びのサポートが必須だ。誰もが適切にさまざまな金融サービスを選択し、正しく安心・安全に利用できる社会の創造を目指す」と金融教育における取り組みを開始した背景を語った。

  • メルペイ 金融教育担当の斎藤良和氏

同社は今後、学校現場における同教材の導入を推進していくとともに、学校現場や専門家のフィードバックを取り入れながらテーマの拡充や新たな教材の開発を進める方針だ。

金融教育に対するニーズの高まり

新型コロナウイルス感染防止の影響もあり、日本におけるキャッシュレス化は加速している。NECソリューションイノベータの調査によると、2020年のスマホ決済の利用率は43.4%と、2019年の18.7%から大きく増加している。

  • 進展するキャッシュレス化 出典:NECソリューションイノベータ

またキャッシュレス化は若年層にも浸透している。SMBCコンシューマーファイナンスによると、2020年9月時点で、高校生の33.5%、大学生の44.6%がキャッシュレス決済を利用。利用を希望しない人は約3分の1にとどまり、今後もキャッシュレス決済の利用拡大が見込まれる。

キャッシュレス化の進展に加え、2022年4月には成年年齢の引き下げ(20歳から18歳)や、新学習指導要領における金融教育の内容拡充(高校)といった大きな環境変化があり、金融に関する教育のニーズはさらに高まりをみせている。

成年年齢の引き下げにより、クレジットカードの作成や携帯電話の契約、ローンを含む自動車の購入などが保護者の合意を得ることなく可能になり、より一層個々人の自立心が求められる。また、高校では新学習指導要領により2022年4月から、家庭科では個人の会計を、社会・公民科では経済社会の仕組みについて学習する。

一方で、学校現場では金融教育における指導者のナレッジ不足を課題に感じている。日本証券業協会の調査では、教員が金融経済教育を授業で取り上げる際に、難しいと感じていることとして「教える側の専門知識が不足している」(48.4%)や、「現実経済の変動が複雑すぎる」(37.8%)などが挙げられている。

  • 金融教育における指導者のナレッジ不足 出典:日本証券業協会

さらに、教員が授業準備にかけられる時間の不足も金融教育発展の足かせになっている。日本教職員組合の2021年の調査によると、平均時間外勤務時間が月に96時間44分に上るなど教員の多忙さは社会課題となりつつあり、「授業にかけられる時間が足りない」という教員からの声が上がっている。

同会見に登壇した鳴門教育大学准教授・坂本有芳氏は、「学校現場で授業進行にすぐ活用できる副教材があると、教員の負担は大幅に軽減される。また社会実態との乖離がない教育内容とするためには、より一層民間との連携が重要だ」と述べた。

  • 鳴門教育大学准教授・坂本有芳氏