ラックは2月17日、増加する特殊詐欺などによるATMの不正利用に対して、同社のFC3(Financial Crime Control Center:金融犯罪対策センター)が不正取引を検知および防御する新サービス「AIゼロフラウド(AI zeroFraud)」を開発したとして、同日より金融機関向けに提供を開始すると発表した。
同サービスはAI(Artificial Intelligence:人工知能)の技術を駆使した金融機関向けの不正取引検知システムだ。金融機関のサービス利用者の取引行動から特殊詐欺と思われる行動を検出し、不正利用を停止できるという。
同サービスが搭載する不正取引検知AIは金融犯罪対策に特化しており、FC3および金融機関が持つ犯罪パターン情報を活用しているという。金融機関におけるすべての取引のうち不正取引はわずかであるため、不均衡なデータにより学習しなければならない点が課題だった。しかし同サービスでは、学習用データの比率を調整しAIモデルの「特徴量エンジニアリング」に反映したとのことだ。これにより、実証段階では94%の不正取引検知率を示している。
同サービスの特徴として、金融機関のシステムとの連携は取引データと分析結果の送受信のみを行う点がある。既存の金融機関のシステムには大きな変更を加えずに実装可能である上、既存のルールベースの不正取引検知システムとも協調しながら動作する。金融機関から取得した取引データはリアルタイムでAIが解析し、即時に通知や取引停止といった対応につなげることができる。
また、このAIモデルは、FC3が収集した最新の犯罪パターンや各金融機関の犯罪対応担当者が確認した誤検知などに基づき、定期的にフィードバックを受けることでメンテナンスされるとのことだ。
同サービスの導入によって、金融機関の監視・モニタリング担当者は誤検知率や運用負荷の低減が期待できる。また、金融犯罪対策担当者にとっては不正検知率の向上が期待できるだけでなく、既存のルールベースシステムに対するルールのチューニングに必要な業務負荷から解放され、犯罪手口分析など付加価値の高い業務にリソースを集中できるようになる。
同社は同サービスの導入フローについて、「事前検証(PoC)フェーズ」「開発・導入フェーズ」「運用フェーズ」の3段階を想定している。事前検証フェーズでは、導入を検討している金融機関のシステムにおける過去の取引データによりAIモデルを調整し、システム導入の実現性や有効性を確認する。
開発・導入フェーズでは各金融機関のシステム環境に合わせて不正取引検知システム開発に着手する。導入後の運用フェーズとしては、定期的にAIエンジンのメンテナンスを実施して最新の脅威などに継続的に対応していく予定だ。
同社では2月17日から事前検証フェーズの受付を開始する。金融不正利用における不正検知精度の検証を目的として、金融機関の過去取引データや属性データから導入効果を検証するという。スケジュールは約6カ月間を想定している。