KDDIとエナリスは2月17日、2021年10月から12月に実施した5G(第5世代移動通信システム)とMEC(Multi-access Edge Computing)の商用サービスであるAWS Wavelengthを活用した仮想発電所「VPP(Virtual Power Plant)」の実証実験を実施し、MECを用いた分散型電源のリアルタイム制御に成功したことを発表した。各分散型電源に接続する専用端末の性能をMECに持たせることにより、端末の低コスト化と制御精度向上の両立を実現するという。
近年は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギーの導入による主力電源化が目指されている。安定した電気の供給には発電量と電力需要量のバランスが重要だが、再生可能エネルギーは発電量が季節や天候に左右されやすく、家庭用蓄電池をはじめとした分散型電源の制御による需給の調整が必要となる。VPPは需給の調整を行う役割として期待されており、今後の利用拡大に向けては、より多くの分散型電源を低コストで迅速かつ高精度に制御できる技術が求められている。
AWS Wavelengthは、KDDIの5Gネットワーク内にAWSのシステムを配置してデータ処理することで、アプリケーションの超低遅延処理を実現するものだ。2021年に実施した実証実験では今後普及が見込まれる家庭用蓄電池やバッテリー式電気自動車を想定して、エナリスのVPP技術基盤とKDDIのAWS Wavelengthを活用し、より高度で高速な分散型電源制御の実現性を確認したという。これまで各分散型電源リソースに設置していた専用端末とクラウド型のDERMS(分散型電源マネジメントシステム)で担ってきた制御処理などを、AWS Wavelengthに移行したとのことだ。
実証の結果、5GとAWS Wavelengthを利用したVPPにおいて、今後必要とされる分散型電源の制御のリアルタイム化と高度化を実現し、分散型電源による安定的な電力供給が図れることが示された。また、各分散型電源リソースに接続した専用端末をAWS Wavelengthに移行するため、従来は分散型電源側に設置していた高性能なゲートウェイ装置が不要となり、電力ユーザー側にかかるコスト低減が可能であることを確認したという。
両社はエネルギー分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進と多様な分散型エネルギーリソースを活用したアグリゲーションビジネスの拡大を通じて、日本社会のカーボンニュートラル実現を目指すとしている。