アリババクラウドは2月17日、北京2022大会を支援するさまざまなクラウド技術について公表した。OBS(Olympic Broadcasting Services:オリンピック放送機構)との協業のもとで、同社のクラウド技術を活用して放送の効率化を推進しているという。
放送権を有する各国のライツホルダー(放送権者)がパブリッククラウドのインフラを通じたライブ映像を受信できるのは、冬季大会としては今大会が初となる。同社のクラウドソリューションは、従来の中継伝送方式と比較してコストを抑えられる上、敏しょう性に優れているとのことだ。放送権者はOBSから提供される映像の中から最適なアングルを選択して映像を配信可能だ。
OBSクラウドの一環として、「Live Cloud」が放送権者向けの標準サービスとして導入された。北京2022大会では世界で20以上の放送局が「Live Cloud」を利用しており、OBSとアリババが共同開発した放送ソリューション「OBSクラウド」を通じて、大会のライブ信号をUHD(超高精細)またはHD(高精細)規格で受信している。OBSクラウドは専用の通信回線や衛星回線を使用しており、従来のソリューションよりも効率性が高い特徴を持つという。
クラウドを通じたコンテンツ配信は低遅延かつ高レジリエンスであり、拡張性、柔軟性、コストの低さに強みがある。クラウド技術は安定性や弾力性といった特性により、人気イベントのライブストリーミングの需要が急増した場合でも、放送の品質を確保できるとのことだ。OBSは「Live Cloud」において、放送局が受信したい映像フィードをいつでも選択できるアプリケーションを実装している。
また、OBSとアリババは大会期間中、よりダイナミックで魅力的な視聴体験を提供するために、マルチカメラのリプレイシステムを導入し、静止画によるスローモーションリプレイを提供している。これにより、カーリングやスピードスケートなどのマルチアングルのライブ映像をキャプチャし、エッジクラウドを介してリアルタイムで処理した後、指定した瞬間リプレイとして共有可能となった。この処理はクラウド上で数秒で完了し、ライブ中継映像の一部として統合し配信できるという。
アリババのクラウド上では、OBSのコンテンツ配信プラットフォームである「Content+」も稼働している。放送権者は「Content+」を通じて短編コンテンツやあらゆるHDライブ配信へアクセスできるほか、OBSが制作したすべての追加コンテンツの閲覧やダウンロードが可能だ。大会期間中にOBSは6000時間を超えるコンテンツを作成する予定であり、放送権者は報道に利用可能となる。
さらに、「Content+」上で放送権者がライブセッションからサブクリップを作成する機能を追加したことにより、ライブ配信中に編集作業を開始できるようになったほか、遠隔地で多量のコンテンツを編集して、ソーシャルメディアで配信するためのクリップを作成できるようになった。クラウドベースの編集機能を利用して、OBSとしては初めて編集チームがリモートで作業可能になったのだという。