宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月14日、小惑星リュウグウから「はやぶさ2」が持ち帰った回収試料が、リュウグウを代表する粒子であること、ならびにその表面には平板状粒子が存在し、それらが持ち帰られたことが示されたと発表した。
また、サンプラーシステムが正常に作動し、5gのサンプルが持ち帰られたことも確認されたことも併せて発表された。
同成果は、東京大学大学院 理学系研究科 宇宙惑星科学機構/JAXA 宇宙科学研究所(ISAS)の橘省吾教授をはじめとする、国内外40を超える大学や研究機関に属する100名超の研究者からなる国際共同研究チームによるもの。詳細は、米科学誌「Science」に掲載された。
「はやぶさ2」が持ち帰ったリュウグウの試料(サンプル)はセンチメートルサイズのものまで含めさまざまで、現在は原子レベルまでの分析がなされている。ただし、アポロ計画で持ち帰られた月面の石のように、複数のミッションで宇宙飛行士がさまざまな地点から多種類を持ち帰ったわけではないため、試料を分析するにあたっては、その試料がリュウグウで一般的なものであるかが重要となるとされる。そのため、今回の調査では、はやぶさ2が撮影した画像や、イブーとアウルが撮影した画像などを解析し、試料と比較し、その代表性の検討が行われることとなったという。
その結果、「はやぶさ2」がタッチダウンしてサンプラーホーンがリュウグウ表面から見事にサンプルを採取した瞬間を撮影したCAM-Hの画像から5gのサンプル採取は弾丸発射によるものであることが判明したほか、2回目の着地後の上昇時にCAM-Hが撮影した画像には、リュウグウ表面の粒子が、探査機上昇時のガス噴射で舞い上がった様子が写っていたことから、そうした粒子1つ1つを複数の画像で追跡、総数67個の粒子の形状を解析。凹凸のはっきりとした粒子と、凹凸が少なくなめらかな粒子の2種類が存在することが判明したとする。これは探査機や着陸機「MASCOT」がリュウグウ表面の岩石に発見したものと同様で、着地点付近の粒子はリュウグウ表面の岩石と良く似たものがあることを示唆しているとする。
また、67粒子のうちの17粒子は平たく細長い粒子であることも確認。この平たく細長い粒子は、2回の着地どちらでも観測され、リュウグウ表面に典型的に存在する粒子であることが判明。こうした平たい粒子形状は、光学航法カメラで着地直前に撮られた画像でも確認されたほか、イブーとアウルが撮影したリュウグウ表面の画像からも岩が割れて、平たい粒子が取れそうな状態が見つかっており、リュウグウ表面を代表する形状の1つだという。
さらには、回収試料にも平たく細長い粒子が含まれていることが、キュレーションチャンバー内での粒子観察から判明。2回目の着地で採取された1cmに近いサイズを持つ粒子「C0002」もその1つだという。
研究チームによれば、今回の成果は、「はやぶさ2」のサンプラーが正常に作動し、リュウグウ表面を代表する粒子を持ち帰ることに成功したことを示すものであり、これにより現在進められているリュウグウ試料の詳細分析の結果も、リュウグウを代表する粒子から得られるものとなることから、リュウグウの全体像の解明につながることが期待されるとしている。