中国の大手ファウンドリSMICが発表した2021年第4四半期(10~12月)決算概況によると、同四半期の売上高は前年同期比61%増の15億8005万ドルで、同社にとって売上高が15億ドルを超えたのは初めてのことだという。営業利益は同24倍の4億2011万ドルし、純利益は同2.1倍の5億3377万ドルとすべての数字が過去最高となったほか、2021年通年の売上高も前年比39%増の54億4300万ドル、営業利益も同4.5倍の13億9300万ドルとなった。
同社は、米国政府のエンティティリストに追加され、10nmプロセス以下の微細プロセス向け半導体製造装置の購入ができない状態となっているが、規制を受けないレガシープロセスに注力することで、業績を伸ばしたという。
2021年通年の売上高も大幅伸長
2021年第4四半期のアプリケーション別売上高比率は、スマートフォン向け31.2%、コンシューマー・エレクトロニクス製品向け23.7%、スマートホーム向け12.7%、その他32.4%となっている。また、製造プロセス別の売上高は、同社の先端プロセスとなる28nmおよびFinFETが18.6%、40/45nmが15.3%、55/65nmが26.8%、90nmが2.5%、0.11/0.13μmが5.3%、0.15/0.18μmが28.6%、0.25/0.35μmが2.9%となっているほか、国・地域別の売上高は、中国向け68.3%、北米向け19.6%、欧州・アジア向けが12.1%となっており、北米比率が下がり、中国比率が高まる傾向にある。これは、中国政府の半導体自給自足方針を踏まえたものとみられる。
2021年末時点の月産生産能力は8インチウェハ換算で62.1万枚だが、同社では2022年末までに13~15万枚増やし、月産75~77万枚に引き上げる計画としている。また、2021年第4四半期の工場稼働率は99.4%と高い水準が続いており、新たなファブが稼働するまで生産能力は増やせる状況にはないようだ。
なお同社は2022年第1四半期(1~3月)の売上高予測として、前四半期比15~17%増としているほか、2022年通年の売上高についても「前年比成長率がファウンドリ業界の平均を上回る」との予測を示し、粗利率も前年比で上昇する見込みだとしている。
北京、新セン、上海に新ファブ建設で生産能力を現在の2倍へ
SMICは、半導体の国内自給率向上をめざす中国政府の後押しを受けて生産能力の拡大を急いでおり、すでに北京市、上海市、広東省深セン市に半導体ファブ建設を発表しており、総投資額は188億ドルに達する。北京と深センのファブは2022年末にも稼働する予定のほか、着工したばかりの上海の巨大ファブも2025年前後には稼働する見通しであり、同社幹部は「3工場がフル稼働すれば、生産能力が現在の2倍になる」としている。
新工場で生産されるのは、主に中国企業から生産受託した28nmプロセス以上のレガシープロセスを用いた製品が主体で、40~55nmプロセスに注力するという。SMICは、10nmプロセス以下のデバイスを製造する米国製半導体製造装置などを入手できない状況だが、現在も10nmプロセス以下のデバイスは製造していないので当面影響はないとしている。
米国政府は、エンティティリストに追加したSMICに対する制裁がまったくと言ってよいほど効き目がないため、今後、現在の規制である「10nm以下のデバイスを製造する装置」ではなく「10nm以下のデバイスを製造する能力(capability)のある装置(つまり14nm以上のプロセス用の装置であっても10nm以下のデバイスを製造する能力がある装置)」をすべて輸出禁止にしようと関係機関と協議を重ねているが、米国半導体製造装置業界の反対で実現に至っていない。
中国政府は、SMICの生産能力を倍増するために資金援助を行い、国内需要を優先させることで、SMICを「中国製造2035」に向けた半導体自給自足体制を確立するための中核的存在にしようとしている。このため、中国以外の企業からの生産受託を断るケースが増えているとの噂もあるが、生産能力が増えない中、海外企業からの売り上げを下げ、国内を優先していることが発表資料からも読み取ることができる。