半導体業界は何十年にもわたり、イノベーションの力で困難を乗り越えてきました。困難と思われる技術的課題に直面するたびに、私たちは革新的なアプローチや手法を考案し、世の中の働き、遊び、学び、つながり方を解決する変革を後押ししてきました。そして現在、私たちは再び、新たな重要課題に直面しています。それは世界的な人材不足です。
半導体需要の急増にともない、業界は飛躍的に成長しています。世界の半導体市場は、2030年代初頭までに1兆ドル規模に達すると予測されています。大局的な視点で言えば、半導体業界が5000億ドル規模に達するまでに50年以上かかりましたが、さらに5000億ドルの成長を達成するのに要する年数は10年しかかからないということです。同時に、技術の複雑化は加速し続け、今後もイノベーションの必要性が低下することはありません。
とてつもなく大きな機会は広がってはいますが、全体的な労働力不足が、あらゆる業界の企業に悪影響を及ぼしています。米国コンサルティング会社のコーン・フェリー社が実施した調査によると、労働力不足により実現できなかった生産活動を加えると、毎年2.1兆ドル以上の損失を企業にもたらしているといいます。2030年までには、8.5兆ドルという驚くべき損失額になると予測されています。
世界のテクノロジー業界や先進的な製造業界で何百万人分もの求人がある中、半導体業界は、新たな人材の獲得・維持だけでなく外部調達においても激しい競争にさらされています。
ラムリサーチは、優秀にもかかわらずこれまで発掘することができなかった人材を見つけるためには、ダイバーシティとインクルージョンが極めて重要な役割を果たすと考えています。
そうした背景から、我々は先日、2000人近くのCEOが署名した「ダイバーシティとインクルージョンのためのCEOアクション(CEO Action for Diversity and Inclusion)」という誓約に賛同しました。これは、職場におけるDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の推進にあたり、定量的な取り組みと有意義な変化を促すことを目的とするものです。
半導体業界の人材採用と労働力開発の戦略においてDEIを優先することで、私たちが人材の多様な経験、視点、経歴を重視していることを現在および将来の労働力に示すことができます。いっそう開かれたインクルーシブな企業文化を築くことにより、業界全体で最高の人材を獲得・維持する能力が向上します。
しかし、それはゴールではなく、現在の労働力不足の解消を超えたことに取り組まなければなりません。将来に向けて業界の成長とイノベーションの需要に応えられるようスケールアップを果たすには、将来の労働力を今から開発し始めなければなりません。労働力開発と教育の取り組みは、将来のSTEM人材の強固なパイプラインを構築する上で不可欠の要素であり、だからこそLam Researchも、SEMIやThe National GEM Consortiumをはじめとする組織とのパートナーシップに投資をし続けています。
世界的な人材不足は今日最大の課題の1つかもしれませんが、絶好の機会でもあります。現在の人材パイプラインのダイバーシティ向上に業界として取り組めば、将来、半導体の新しい画期的な進歩を促す能力が飛躍的に高まるでしょう。
半導体業界は過去に数多くの技術的課題を乗り越えてきましたが、この新たな課題にも業界全体で取り組まなければなりません。イノベーション、不屈の精神、ひたむきさで、未来に向けた基盤を築いていきましょう。