自動車業界がコネクテッドカーや自動運転車の未来に向かって前進し続ける中、AIを活用した音声アシスタントは、ドライバーのコネクテッドライフと車内エクスペリエンスをつなぐ重要な役割を担います。
車内アシスタントは、ドライバーが何を必要とし、何を求めているのかを予測することができ、さらに、適切なタイミングで情報をドライバーに提供する、まるでCo-Pilot(コパイロット:副操縦士)のような、インテリジェントでマルチモーダルな機能に進化します。Cerenceでも、先般インテリジェントな車内アシスタント「Cerence Co-Pilot」を発表しました。
現在、よく知られ、利用されている車載音声アシスタントが、このような未来の“Co-Pilot機能”にどのように進化していくのか、そしてどのような機能を持つようになるのかを見ていきましょう。
AIを活用した音声アシスタントにとって、車が最良の環境であるという理由
音声アシスタントは、銀行への電話からリビングルームでの音楽の選択操作に至るまで、日常生活のあらゆる場面で使われようになっていますが、なかでも車内での音声アシスタントは、安全性、生産性、そして使いやすさの点で最も重要なものの1つです。
現在の音声アシスタントとのインタラクションの多くは、車内外を問わず、コマンドによる応答で行われていますが、自然言語理解(NLU)やジェスチャー、視線検知などの車内センサー技術の進歩は、プロアクティビティという新しいコンセプトをもたらしています。
統合されたプロアクティブな音声アシスタントは、車外と車内で起きていることを結びつけることで、これまで不可能と思われていた方法でドライバーにサービスを提供し、車内エクスペリエンスをさらに向上させます。
ドライバーの好みを学び、パーソナライズされたエクスペリエンスを創造する未来のCo-Pilot機能
AIを活用する利点の1つは、ドライバーのニーズや好みを継続的に学習し、その結果、より良いエクスペリエンスを構築する機会を得ることです。例えば、AIシステムは、ドライバーが現金ではなくクレジットカードでの支払いが可能な屋根付き駐車場のオプションを好むことを学習したり、ドライバーがある種の料理を楽しんでいることを理解して、新しい街でドライブする時に関連するレストランに誘導したりすることができます。
このようなエクスペリエンスは大変魅力的ですが、時間の経過とともにドライバーの好みを学習するように設計する必要があり、誤判定やドライバーのフラストレーションを避けるためにはドライバーによる検証も必要です。
今後5〜10年の間に、車の自動化とCo-Pilot機能の進化に伴って、ドライバーの役割が変化していくのが見られるでしょう。今まで通常は移動中に無効にされていた機能が、地図とのインタラクションや買い物リストの作成から、家族や友人とのミーティングや会話に至るまで、より柔軟に利用できるようになります。
車内コマースの鍵となるドライバーのエンゲージメント
最近行われた調査では、ドライバーが今日求めている機能に関して、車内コマースは優先度が低いと指摘されています。
その理由は単純で、ほとんどの場合ドライバーはこの種の技術または機能が車に搭載されていることを知らないからです。ドライバーが簡単に利用でき、車内で行っていることの一部として、安全に使い始められるように設計された車内コマースのプラットフォームであれば今後の利用が増えると思われます。
例えば、Cerence Payは、車の既存システムとして完全に統合されています。車のセンサーからのデータを活用し車載Co-Pilot機能と直接統合してドライバーに燃料が少ないことを知らせ、最寄りのガソリンスタンドに誘導して安全な声紋認証による支払いオプションを提供します。車内コマースのエクスペリエンスは、ドライバーがすでに車のシステムとエンゲージしていることでより利用しやすくなります。
未来を加速させるハイブリッドクラウドと5G
クラウドと組込技術の両方を活用するハイブリッドアーキテクチャは、消費者が求めているコネクテッドエクスペリエンスを実現するための鍵です。また、5Gは驚異的なレスポンスタイムでコネクテッドエクスペリエンスをさらに改善します。これらの統合アーキテクチャシステムを並行して実行するには、より多くのオンボードコンピューティングパワーが必要になりますが、バッテリーの消費電力をグラフ化してもそれは曲線上に現れません。これらの進歩と3〜6カ月ごとに提供される新機能に対する顧客の期待感を背景に、自動車メーカーはこれまで以上に迅速にソリューションを市場に投入することに注力しています。
未来のCo-Pilot機能は、運転をより直感的で楽しいものにします。
著者プロフィール
スジャル・シャー(Sujal Shah)Cerence
プロフェッショナルサービス担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー
AI、組み込み、クラウドベースの車内インフォテインメントシステムの設計、開発において約25年の経験を有する